MENUMENU

第1回 自動車産業は「技術革新」と「総合的アプローチ」がカギ〈後編〉

日本自動車工業会 環境委員会温暖化対策検討会主査/日産自動車グローバル技術渉外部 担当部長 圓山 博嗣氏


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


印刷用ページ

 製造時の排出削減については、さらなる省エネ対策とBAT(ベスト・アベイラブル・テクノロジー)の導入を進めていきます。大幅なCO2排出削減を行わなければ将来的に気候変動によって起こるリスクが甚大な経済損失をもたらすことでしょう。そうした観点からも低炭素な製造の推進が、最終的にグローバル経済に寄与すると思っています。

――次世代自動車は先進国でのニーズは高いと思いますが、アジア市場や南米、中東やアフリカなどの市場に対しての戦略は?

圓山:次世代自動車は非常に高価です。新興国のGDPを考えると、平均購買力からそんな高いものは買えないでしょう。みなさん新車を買わず中古車を乗り継ぐことになり、排出削減に対して何も実効性が上がらないことになります。GDPの購買力と規制レベルは、ある適正な関係があると考えています。

 新興国に適した低炭素車・技術が必要で、内燃機関を中心とした技術になります。各社がそれぞれの国に、アフォーダブルでより燃費の良い技術を適用しています。自動車メーカーとしては全方位で、すべての技術に対して技術開発が必要です。先進国はトップランナーで次世代自動車を中心に、新興国は内燃機関を中心に安いけれどもエコな車が求められます。「交通流対策」と「エコドライブ」は全世界共通で展開できる取り組みですので、政策的にも導入してもらいたいと思います。

政府への要望と意見

――業界としての政府への要望は?

圓山:革新的技術の普及に対するインセンティブ政策をお願いしています。技術革新のための研究開発投資は莫大ですので、研究開発投資に対して環境整備や協調できるところを政府に主導して頂き、ファイナンス的なサポートをお願いしたい。また、革新的技術の製品は黎明期では大変高価なので、購入補助金と税制優遇等もお願いしたい。

 「低酸素社会実行計画」あるいは日本の「地球温暖化対策計画」は、規制的手法は取っていません。自動車の「燃費規制」はありますが、「CO2規制」はありません。自主的な活動を中心に柔軟性のある状態での取り組みがなされているわけです。「排出量取引制度」のような規制的な手法は反対したいと思います。理由は、研究開発や低炭素な製造活動に対して、非常に大きな阻害要因になっていく可能性があるからです。

 自動車は少なくとも単体の燃費規制があり、それで十分だと思います。排出量取引制度ではセクター間で取引を最終的にしていくことになり、セクター間での公平なキャップは不可能だと思うからです。自動車業界がこれだけ汗かきます、鉄鋼産業はこれだけ汗かきます、この汗のかきかたはみんな一緒ですというのは、なかなか設定しづらい。皆が公平に汗をかくなら可能ですが、これができない限りはこの制度は難しいでしょう。

――最後にメッセージをお願いします。

圓山:日本、そして世界的にも自動車業界が温暖化対策をリードしていくことが期待されていることに、我々も責任を感じています。業界として、日本として攻めるべきところを議論しながら、日本全体を支えていきたいと思います。

【インタビュー後記】

 圓山氏のお話から、「技術革新」と「総合的アプローチ」により、自動車業界が日本、そして世界の市場で温室効果ガス排出の大幅削減に貢献していくという明確なビジョンがうかがえました。今後の新たな動きとして、自動運転などの最新技術を導入した「交通流対策」により高速道度の渋滞を減らすことも実現可能性が高いとお話いただきました。自動車をめぐる社会システムの整備が、私が思っていた以上に進化していることにも驚きました。私たちユーザー側も「次世代自動車」や「エコドライブ」が温暖化対策に効果があることをもっと意識して車を利用していきたいですね。

special201606002_05

記事全文(PDF)



産業界が読み解くパリ協定の記事一覧