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化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉(その5)

世界の化石燃料枯渇の鍵を握る中国の経済成長


東京工業大学名誉教授


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 以下、日本エネルギー経済研究所(エネ研)データ(文献5-1)記載のIEA(国際エネルギー機関)データ、および、資源量についてのBP(BritishPetroleum)社のデータを用いて論じる。

石炭消費の多い中国の化石燃料消費

 中国におけるエネルギー源別の資源量で表した一次エネルギー消費量では、図5-1に示すように、圧倒的に石炭が多く使われている。この石炭消費量は世界の50.8%におよび、その46.4%が発電用に使用され、また、電力構成の86.3%(石油換算一次エネルギーでの百分率)を占めている。
まさに、石炭大国と言ってよいこの石炭が、中国の高度成長を支えている。

図5-1

注;かっこ内数値は対合計百分率
図5-1 中国におけるエネルギー源種類別一次エネルギー消費量、2012年
(IEAデータ(文献5-1に記載)をもとに作成)

中国でも化石燃料の枯渇が始まっている

 いま、日本を抜いて、世界第2位の経済大国に発展した中国だが、その発展のエネルギーを賄っている石炭は、今後の中国経済の成長を維持できるだけ、十分にあるのであろうか?BP社のデータから中国における2013年末の化石燃料の種類別の確認可採埋蔵量R、および、その値をもとに計算される当年(2013年)の可採年数R/P(確認可採埋蔵量Rを生産量Pで割った値)を表5-1に示した。また、このBP社の生産量とIEAデータからの消費量から、化石燃料の種類別の現在(2012年)の自給率の値を計算して表5-2に示した。これらの表に見られるように、化石燃料について、中国は決して資源大国とは言えないことが明らかで、化石燃料消費大国中国は、世界の化石燃料資源の保全のためにも、率先して、可能な限り、化石燃料消費節減のための努力を開始する責務がある。と言うよりも、今後も成長のためのエネルギーとして化石燃料の消費を増大させると、今世紀の比較的早い時期に、化石燃料資源の大半を、石炭までもを輸入に依存しなければならないことになり、中国経済自体が苦境に陥るだけでなく、世界経済を混迷に追い込む危機を孕んでいることを厳しく認識する必要がある。

表5-1 中国における化石燃料種類別の確認可採埋蔵量Rおよび可採年数R/Pの値、2013年末
(BP社のデータ(文献5-1に記載)から)

表5-1

注:
*1;中国における値を世界の合計量で割って求めた百分比率、
*2;中国の確認可採埋蔵量Rを中国の生産量Pで割った値

表5-2 中国における化石燃料の生産量、消費量、自給率、2012年
(IEAデータおよびBP社のデータ(文献5-1に記載)をもとに作成)

表5-2

注:
*1 ;BP 社のデータから
*2 ;IEA データの一次エネルギー消費(石炭、石油、天然ガス)データから
*3 ;(生産量)/ (消費量)として求めた

中国は、いま、GDPを基準としたCO2排出量を決める温暖化対策を計画しているが

 上記したように、化石燃料のなかの石炭の比率が高い上に、人口が多いためにCO2排出量が世界第1位(2012年に、世界合計の27.9 %、次いで米国の15.8 %(第2位)、インドが5.8 %(第3 位))の中国は、高度経済成長の結果として、今では(2012年)、一人あたりのCO2排出量が6.71 トン/人と、世界平均の4.63トン/人をかなり上回っている。したがって、地球温暖化対策としてのCO2排出量の削減にも大きな責任が負わされるとして、今年(2015年)の暮れのCOP 21(第21回国連気候変動枠組条約の締結国会議)の対応で、2030 年に国内総生産(GDP)あたりのCO2排出量を2005 年比で60 ~ 65 % 削減し、排出量のピークとするとの目標を発表している(朝日新聞2015/7/1)。新興国中国における実質GDP(購買力平価ベース、2010年の価格、国際ドル)あたりのCO2排出量(CO2/GDP比)の値を、先進国並みの値(2012年の10-3 トン/USドルの値で、米国の0.328、日本の0.195に対し、中国は1.30)に低減することで、下記するように、成長を継続しながら、CO2の排出量を現状の値に近い値に抑えることができるとしていると見てよい。
 この目標を達成した場合の2030年の排出量の値は明らかにされていないが、今後のGDP成長率をどのように想定するかで、下記の試算例に示すように、その値が大きく変わってくる。

2005年のCO2排出量5,377×106トンCO2、GDP 3,486×109USドルから、(CO2/GDP比)の値は1.542×10-3トン/USドルとなる。
現在(2012年)から2020年の8年間の平均GDP成長率を7 %、20 ~ 30年のそれを5 %

とすると、30年の対12 年の成長比率は、(1.07)8×(1.05)10=1.718×1.629 = 2.798倍と概算される。

一方、(CO2/GDP比) の対05年比60 ~ 65 %(平均62,5 %)減の値は、(1.542×10-3)×( 1 – 0.625 ) = 0.578×10-3トンCO2/USドルとなり、
(30 年の一人あたりのCO2排出量)=(12年の一人あたりのGDP 5.166ドル/人)×( 30年の対12年の成長比2.798) ×(30年(CO2/GDP比)0.578×10-3トンCO2/USドル)= 8.35トンCO2/人 と試算される。

 中国における一人当たりのCO2排出量、および(CO2/GDP比) の年次変化を表す曲線の延長線の上に上記の30年の試算結果を載せて図5 – 2に示した。なお、50年の値は、世界が化石燃料の保全を考えるのであれば、各国が今世紀中の平均化石燃料の消費量を現状の値以下に抑えるべきで、そのためには50年における各国の一人あたりの化石燃料消費量を現在(2012年)の化石燃料の消費量の世界平均値に抑えることを目標にすればよいとの本稿(その3)に記した私の提案目標をCO2排出量(世界平均4.63トン/人)に置き換えた値である。
 中国政府は、この30年におけるCO2排出量の目標値を達成するためには、一次エネルギーに占める再エネ比率を20 % 程度に増やしたり、CO2を吸収する森林蓄積量を増やしたりするとしているが、それだけで、今までの経済成長率を余り下げないで、30 年のCO2/GDP比の値を対05年比で60 ~ 65 % 削減できると言う保証はない。むしろ、バブル崩壊が近づくと言われ、経済成長率が低下するなかで、CO2の排出量が削減することになるのではなかろうか。
 したがって、このようなバブルの崩壊による経済の混乱を避けるためにも、積極的に成長を抑制することで化石燃料消費の節減、すなわちCO2の排出削減の努力をして頂くことを中国政府にお願いしたい。いま、中国における成長は、高度成長の結果生じた貧富の較差を是正するために必要だとされている。であれば、成長の抑制のなかで、この貧富の較差を是正する対策が用いられてよいはずである。いや、このような成長の抑制による化石燃料消費の節減策が採られない限り、いま、化石燃料エネルギーに大きく依存する中国経済が混迷の危機に陥る日がそう遠くないと考えるべきである。すでに、世界経済に大きな影響力を及ぼすまでに発展した中国には、自国の経済の安定化に努力する責任が背負わされているはずである。

図5-2

注; 2030年の値は推定値、2050年は目標値(本文参照)
図5-2 中国におけるGDPあたりのCO2排出量と一人あたりのCO2排出量の年次変化
(IEAデータ(文献5-1に記載)をもとに計算、作成した)

<引用文献>

5-1.
日本エネルギー経済研究所編;「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2015年版」、省エネルギーセンター、2015 年

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