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英国における再生可能エネルギー補助金カットの動き


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授


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 しかしこのスピーチの中で彼女が最も強調したかった部分は、「支援は対象技術がいずれ二本の足で立ち、補助金にずっと依存し続けるものであってはならない」(But the support must help technologies eventually stand on their own two feet, not to encourage a permanent reliance on subsidy)ということではないか。更に読んでいて驚いたのは以下のくだりである。ニュアンスを正確に伝えたいのでまず原文を読んでほしい。

We need to act together. And we should be strong and decisive.

But how we act is equally important.

It cannot be left to one part of the political spectrum to dictate the solution and some of the loudest voices have approached climate action from a left wing perspective.

So I can understand the suspicion of those who see climate action as some sort of cover for anti-growth, anti-capitalist, proto-socialism.

 これまで欧州のエネルギー環境大臣のスピーチを数多く聞いたり読んだりしてきたが、野心的な気候変動対策を求める声を左翼や反成長、反資本主義や社会主義と関連付けたものを初めて見た。欧州の環境保護運動の中に、そうした要素が含まれていることは、気候変動交渉に参加してきた経験に照らしても時間として感ずる。かつて、ある親しいエネルギーエコノミストが野心的な温暖化対策を求め、政府や企業の野心の低さを攻撃する環境NGOを評して「彼らはスイカだ。外は緑で中は赤だ」と言っていたことを思い出す。エネルギー関係者、産業界との雑談でも類似したコメントをしばしば聞いた。しかしそれらは「大きな声では言えないが・・・」というものであり、大っぴらに環境NGOを批判するようなことはpolitically incorrect であった。その意味で、ラッド大臣のスピーチの中に上記のくだりを見出したときは「ここまではっきり言うのか」と驚いた。深読みすれば、コストを度外視してひたすら野心的なCO2削減対策、野放図な再生可能エネルギー支援を求める業界団体、環境関係者に対する宣戦布告とも受け取れる。

 本コラムにおいて、コスト意識の高まりやエネルギー安全保障のプライオリティの高まりといった欧州のエネルギー環境政策の状況変化を累次にわたって紹介してきたが、今回の英国の動きは非常に興味深い。日本では福島第一原発事故以降、ドイツばかりが欧州右代表のような形で語られてきたが、コスト重視を前面に打ち出した英国の今後の動向は要ウオッチであると考える。特にドイツ以上に優遇されたFITを導入し、制度開始後3年余りで早くも制度見直しを強いられている日本は、英国のコスト意識から学ぶべきところが多いのではないか。

 3年弱にわたって「英国で考えるエネルギー環境問題」に寄稿してきたが、4年4ヶ月の英国駐在を終え、8月半ばに帰国することとなった。帰国後は東京大学公共政策大学院教授としてエネルギー環境政策を講ずる予定である。拙文をお読みいただいた方々に御礼申し上げると共に、帰国後は新たなコラムの下に、引き続きエネルギー環境問題についての私見を綴ることとしたい。

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