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電力価格高騰が遠ざける低炭素社会


キヤノングローバル戦略研究所/IPCC第6次評価報告統括代表執筆者(イノベーションとテクノロジー)


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5.温暖化対策の長期戦略としての電力価格抑制

 性急に電気の低炭素化を図るあまり、EVやヒートポンプなどの電気利用技術の革新が遅れるようでは、元も子もない。「角を矯めて牛を殺す」とはこのことであろう。そうならないよう、電力価格を抑制することも重視せねばならない。すると、今日の日本の状況においては、安価な石炭火力発電を利用することも、重要な手段の一つであることが分かる。
 「電化」と「電気の低炭素化」は両輪であり、どちらも、長期的な視点に立って進めねばならない。電力価格を抑制することで、技術革新を促進しつつ電化を進める一方で、電力価格が高騰しない範囲内に限定する形で、電気の低炭素化を進めることが望ましい()。
 再エネについて言えば、現状ではコストが高いので、性急に導入拡大をするのではなく、まずは研究開発に投資をすべきであろう。将来、低コストで安定した再エネ電力供給の目途が立ったなら、そのときは大量導入をして電気の低炭素化を一気に進めればよい。
 電力価格が高くなると、電力消費が減るので、CO2も削減されて温暖化対策として望ましい、という視点もある。だがこのような議論が成立するのは、他のCO2排出と足並みをそろえて電力価格が高くなる場合に限る。再エネ導入等が原因で電力価格だけが突出して高くなるようでは、短期的に見ても却って化石燃料の直接燃焼を増やして逆効果になる惧れがある。増して、長期的な戦略として見るならば、電化を阻んでしまうので完全な間違いである。
 また、電力価格が高くなると、確かにLED等の省電力な技術革新も進むという側面はあるだろう。だが、いくら省電力な技術が進んでも、国全体のCO2排出の3分の2を占める化石燃料の直接燃焼を電気利用で置き換えていかない限り、温暖化問題の最終的な解決のために必要な、CO2の大幅削減は原理的に不可能である。電気利用技術が、公正な条件のもとで市場で競い合い、優れたものが普及していくためには、電力価格の高騰は避けねばならない。


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