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2030年度電源構成のなかの再生可能エネルギー(再エネ)比率の意味を考える(その3)

COP 21に向けて日本に求められるのは、世界の化石燃料消費の具体的な削減提案でなければならない


東京工業大学名誉教授


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地球温暖化対策のためのCO2の排出削減の国際的要請は、世界が現状の化石燃料の年間消費量を維持すれば達成できる

 地球温暖化問題が起こった1990年代以降、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、この温暖化の原因だと主張しているCO2の排出削減を目的として、化石燃料代替の再エネの利用・拡大が広く訴えられるようになった。そのために、先にも述べたように、経産省が発表したのが今回のCO2の2030/2013比26%の数値である。これに対して、朝日新聞は社説(2015/5/4)で、「政府案は意欲に欠ける」と批判している。
 しかし、考えて欲しい。本稿(その2)でも述べたように、地球温暖化の問題は、地球の問題である。世界の3.75%しかCO2を排出していない(2013年の値、文献3-1から)日本が、いくら頑張って高い排出削減率を提示してみても、世界の協力がなければ、地球上のCO2排出量は削減できない。これに対して、最も確実にCO2排出を削減できる方法は、地球上での化石燃料の消費量を削減することである。
 IEA(世界エネルギー機関)のデータ(エネ研データ(文献2-1))から、現在(2012年)の世界のCO2排出量は32,562百万トンとあるから、世界が、このCO2の年間排出量を今後も守るように化石燃料消費を抑制することができれば、今世紀末までの累積CO2排出量は.2.9兆トン(=(32,562百万トン/年)×((100-12)年))と計算され、IPCCが何とか温暖化の被害に耐え得るとする地上気温上昇幅2℃以下に抑えるために必要なCO2の累積排出量の値4兆トンよりも小さくできる。
 なお、地球上の化石燃料の確認可採埋蔵量(現状の採掘技術で経済的に採掘可能な埋蔵量)の値から私が計算したCO2の累積排出量は3.23兆トンであるから、経済力のある先進諸国が経済成長のためとして、無謀な化石燃料の消費を行わない限り、IPCCが訴える「将来取り返しのつかない事態」には陥らないで済む(文献3-3)。

現状の化石燃料の年間消費量を守るための各国の化石燃料消費節減目標

 具体的には、世界各国が協力して、現在(2012年)の世界平均一人当たりのCO2の排出量4.63トン/人を守るように、化石燃料消費量をコントロールすればよい。このためには、例えば、先進国としての日本の場合、2005年(CO2排出削減目標の基準年とされている)の9.54トン/人を約半減(0.485(=4.63/9.54))しなければならない。ただし、それは、いますぐでなくてもよい。当分の間は、先進諸国の削減分と、新興国・途上国の増加分がキャンセルされて、世界の排出量が現在の値を超えないようにすればよい。したがって、その目標達成年を2050年として、その時の化石燃料消費を現在(2012年)の51.5%(=1-0.485)減とすれば、2030年の目標値は、24.4%(=(51.5%)×((30-12)年)/(50-12)年))減と概算される。
 また、世界一排出量の多い米国(2005年に19.6トン/人)は、同じ2050年までに76.4%減(=(1-(4.63/19.6)))が要求されるが、2025年の要求削減比率は、同上の計算で、28.4%(=(76.4%)×(25-12)/(50-12))減となり、いま、米国がCOP21に提出している目標値「25年に05年比で26~28%減」が、何とかクリアできそうである。
 いずれにしろ、人類が目標としなければならないのは、温暖化防止を目的としたCO2の排出削減ではなく、現代の文明社会を支えている化石燃料を息長く使うための化石燃料消費の削減である。結果としてのCO2の排出削減により、上記したように、地球温暖化が、もしIPCCが主張するようにCO2の排出に起因するとしても、何とかそれを防止できる(文献3-4参照)。

引用文献

3-1.
日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;EDMエネルギー経済統計要覧、2015年版、省エネセンター、2015年
3-2.
久保田宏;科学技術の視点から原発に依存しないエネルギー政策を創る、日刊工業新聞社、2012年
3-3.
久保田宏;IPCC第5次評価報告書批判――「科学的根拠を疑う」(その1)地球上に住む人類にとっての脅威は、温暖化ではなくて、化石燃料の枯渇である、ieei2014/01/15、
3-4.
久保田宏;COP21に向けての重要な提案;化石燃料の節減こそが求められなければならない(その1)米中首脳が温室効果ガスの削減目標で合意したと言われるが、ieei2015/01/05、(その2)世界の化石燃料消費の背源こそが、地球環境保全のための世界的な合意の主題でなければならない、ieei2015/01/07、(その3)化石燃料の節減のためには、先進国の経済成長の抑制が求められる、ieei2015/01/13

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