「クリーンパワープラン」~石炭火力に厳しい新規制(1)


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 米国では石炭火力について、以下の3点から今後の行方が論争の的になっている。

(1)
大気有害物質基準(MATS: Mercury and Air Toxic Standards」による老朽石炭火力の廃炉の促進
(2)
新設火力に対するパフォーマンス基準(NSPS:New Source Performance Standard)とシェール革命により天然ガス火力の市場競争力が高くなったことから、新設石炭火力のインセンティブが消滅
(3)
これらによって生じている電源構成全体の中での石炭と天然ガスの役割の変化をクリーンパワープランが一層後押し

 米国の環境保護庁(EPA)は2014年6月2日、既存の火力発電所からのCO2排出規制案「クリーンパワープラン(Clean Power Plan)」を発表した。米国の2013年の温室効果ガス排出量の38 %を電力部門が占めているが、EPAはクリーンパワープランの実施によって、発電部門でCO2を2030年に2005年比で30%排出削減できると試算している。このクリーンパワープランは大気汚染物質の規制に関する大気浄化法の下で実施される。

 2014年1月8日時点で運転中・建設中の火力発電設備が対象設備となるが、EPAは各州がCO2排出削減目標に向けた総合的な計画を策定するためのガイドラインを提示している。(※バーモント州とコロンビア特別区(DC)は火力発電所がないため目標値は出されていないが、それ以外の49州は対象となる)

 最終目標年次は2030年だが、各州は、実行計画を2016年6月に制定する予定で、2020年~2029年の期間を中間目標として目標を掲げ、さらに2030年とそれ以降を最終目標として達成しなくてはならない。目標の算定手順は次の通りである。


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対象設備からの2012年CO2原単位を算定
石炭火力の熱効率を6%向上
天然ガスコンバインド・サイクルの利用率を最大70%まで引上げ。これにあわせて石炭および石油・ガス汽力発電電力量を引下げ
2013年運開、2014年1月8日時点で建設・準備・運転試験中の天然ガスコンバインド・サイクルの利用率向上分(55%→70%)の再配分。ベース利用率55%については、その他発電電力量として取扱い。
建設中・退役回避(退役リスク対象炉は全米原子力発電能力の5.8%相当)された原子力発電電力量(利用率90%として算定)を代替発電電力量として分母に加算
既存RPS等を考慮した地域再生可能エネルギー・ベンチマークをもとに各州の導入量を設定(全米では2030年までに13%。代替発電電力量として分母に加算
2012年の州単位の販売電力量×需要家側でのエネルギー利用効率化による省エネレート(%)×1.0751(送配電ロスを考慮)から求められる回避発電電力量を分母に加算(全米では2030年までに10.7%)

 火力発電所における効率改善、石炭から天然ガスへの燃料転換、原子力など低炭素電源の活用、再生可能エネルギーの活用、需要家側でのエネルギー利用の効率化などの政策オプションが出されている。各州の判断で基準に合わせるために複数のオプションを組み合わせることができる。各州は、2016年6月末を期限として計画・規制を策定するが、パフォーマンス・レベルの初期定量化や計画策定に向けたステップを明示することにより、2017年6月末まで1年間の遅延が許容されている。また複数州での取り組みや共同目標とする場合は、さらに2018年6月末までの準備期間が許容される。

 EPAは、クリーンパワープランの実施により、米国では年間73億~88億ドルのコストが生じる一方、気候変動の抑制による経済的利益は2030年には550億~930億ドルになると試算している。また、発電効率の向上と省エネの効果により電気料金は約8%低下し、NO2やSO2など大気汚染物質を25%削減させ、国民の健康向上に貢献するとしている。現在、石炭火力は全電源の39%を占めるが、2030年には30%に下がると想定している。EPAのマッカーシー長官は、クリーンパワープラン案を発表する際、「気候変動への対応は、アメリカの競争力を一層強化するものである」と述べている。



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