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核燃料サイクル政策のあり方についての提言(第5回)


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 前回(第4回)は使用済燃料の適切な処分方策はエネルギー安全保障の基本的条件であり、国は最終的に残る高レベル放射性廃棄物について環境負担をミニマムに抑えることを目標とする高速炉サイクル実用化開発を進めることを明示し、国民の理解を求めるよう提言した。今回は六ヶ所再処理、もんじゅ両プロジェクトとも本格運転に入れば、潜在する技術的課題が顕在化することが考慮されるので、これに伴うリスクへの対応のあり方について提言する。

六ヶ所再処理工場、もんじゅともにこれからが正念場である

 六ヶ所再処理工場、もんじゅとも近いうちに本格的運転段階を迎えることが期待される。全システムが稼働状態に入れば、潜在するシステム固有の技術的諸課題が顕在化する。本格運転達成までには想定を超えるリスクを抱えていることは十分予想されるところであり、その対応のあり方も問われることになる。これからが正念場である。この段階を完全に乗り切ってこそ、漸くわが国の核燃料サイクル開発技術基盤の第一歩が確保されるわけである。国の政策として確認すべき必要な条件は、この難関に立ち向かうにあたって対応可能な組織力整備の確認である。特にプロジェクトの事業主体となる組織の独立性を担保する事業環境整備が不可欠であり、トップに強力な指導者を配備することと、計画決定権、人事権を付与し、十分な財政面での支援を保証することが求められる。
 高速炉開発は純国産技術によるとしている。もんじゅは高速原型炉という開発過程の位置づけにあるが、規模としては大型原子力発電所そのものである。過去唯一の実績である「常陽」からすれば、Na温度が一気に実用炉並みの水準に引き上げられている。試運転段階に入れば、高温Naによる構造体強度への影響評価、発電所規模でのNaの取扱を含む運転保守の基本条件の確認など、わが国としては未知の分野での技術的な実証を確実に進める必要がある。電気事業者は旧動燃の設立当初から主体的に参画し、もんじゅについても、設計レビュー、建設工事・同工程管理に主体的に参画し、試運転段階からは運転・保守要員の派遣などで支援を継続してきた。研究成果重視の旧動燃体質と実務重点の電気事業者との立場の違いが、両者間の意思疎通の支障要因になっていたことは否定できない。結果として事業主体である旧動燃(現JAEA)のプロジェクト意識が希薄化していたことは、国家プロジェクト性格の研究開発のあり方についての重大な反省材料である。現状のままの組織形態では、もんじゅの高速炉と発電所機能を一体化したトータルな高速炉プラント技術の完成は覚束ない。要求に適う組織再編成が必要である。
 一方、日本原燃の六ヶ所再処理工場は、技術実証プラントである東海再処理工場から見れば、処理能力としては大幅にスケールアップした実用化プラントである。その意味では、官から民への技術移転の形式的な意味での区切りはついている。再処理技術は仏国では実証済み技術とはいえ、海外で開発された導入技術である。導入技術は一般に脆弱性が潜在しているといわれている。実運転段階に入れば、基本的には工程管理や技術問題処理は日本原燃が主体的に処理し、必要があれば常駐するアレバ社の支援を受けることとしている。導入技術の脆弱性の完全排除は、六ヶ所再処理工場を真に自立性あるものとして完成させるには必要不可欠の条件であり、日本原燃がその方向に向けて今後の運転過程を自主的に管理する意向を示していることは評価できる。しかし、電気事業者が日本原燃設立以降、純粋な化学工場である再処理工場の経営陣を電力派遣者で占有してきた過去の経緯があり、まさに正念場に立ち向かうこの時点での経営力強化改善は必要不可欠の条件である。

{提言}
 六ヶ所再処理、もんじゅとも本格的な運転段階に入れば、わが国としては完全な新技術への挑戦であり、潜在する技術的課題が顕在化することは当然予想される。想定を超えるリスクへの対応が問われることは十分考えられる。これからが正念場である。基本的な必要条件は、プロジェクト事業主体の組織の独立性である。難事業遂行責任を完全に果たせるよう計画決定権、人事権を付与するとともに、財政面での支援保証が欠かせない。純国産技術によるもんじゅでは、発電所運営機能と高速炉開発機能との完全整合を図った新組織の編成が求められている。導入技術による六ヶ所再処理工場は実用化プラントとして民間の手にあるが、導入技術特有の脆弱性を克服してわが国の自主技術として確立する重大な責務がある。両プロジェクトとも核燃料サイクル技術という統一した視点では国の資産ともいえることから、国は本格的な運転段階に入るに当たって、本格運転達成という重責を果たすために組織の独立性など必要な組織強化を保証する措置を講じ、その整備状況を確認すべきである。

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