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核燃料サイクル政策のあり方についての提言(第3回)


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 前回(第2回)はわが国の核燃料サイクル開発の中核であるべき六ヶ所再処理、もんじゅ両プロジェクトの大幅な工程遅延によりサイクル開発環境が大変な混迷状態にあること、このため使用済燃料処理処分という原子力利用上の最重要方策に重大な支障となりうることに深刻な懸念を提示した。今回は両プロジェクト行程遅延の現状を確認し、解決につなぐ方策を検討する。

1.六ヶ所再処理プロジェクトの現状と課題

 日本原燃は会社創立以来、電気事業者が全面的な資金支援を行ってきたが、同時に人事権、計画決定権も掌握してきた。新導入技術による大規模化学プラントという大事業展開でありながら、幹部職員は電力からの派遣によるという異例の人事方策をとってきた。大手化学会社の参画もなく、また設備・機器の設計・製造、設備レイアウト、工程管理など再処理工場全体を通じて責任をもつプライムコントラクター(プラントメーカー)も決めなかった。当初計画では総建設費7,600億円、完成は1997年としていたが、完成時期変更はこれまで21回、建設費は約2.2兆円に増加している。2010年には同社資本金を倍増する4,000億円への増資があり、電力10社が大部分を引き受けた。今後本格運転達成までにはトラブル対応等を含めさらなる資金需要の発生が予想される。1F事故後の電力各社にはこれ以上の資金支援の余裕はなく、電力による再処理事業支援の継続には大きな困難が予想される。
 技術面では過去の日仏の実証済み技術の改良に加えて、ウラン・プルトニウム混合脱硝(東芝)、ウラン脱硝(三菱マテリアル)など日本独自開発の技術が適用されている。しかし国産技術として導入した高レベル廃液ガラス固化装置(IHI)はトラブルが発生、解決までに5年を費やした。ガラス固化装置は設計寿命を5年としており、設計改良した次期装置は安定運転・処理能力向上を図っており、現在モックアップ試験中である。ガラス固化を除きプラント全体の性能は確認済みであり、後は日本原燃による長期間連続運転の実証を残すのみとなっている。従ってシステム全体が運転状態になった以降の不透明要因は残るものの、技術的には本格運転への道筋は見通せる状態にある筈である。
 再処理技術は、基本的に仏からの導入技術である。日本原燃は、導入技術特有の脆弱性を克服することによりわが国の自主技術として確立し、独立再処理事業者として商業運転という事業目標達成への道筋をつけることが求められている。今後営業運転に入れば、以後段階的に処理能力を引き上げる(25、50、75、100%)こととしているが、建設時と異なり、全く未経験の技術領域に突入する。トラブル対応、設備改造など重要な経営判断を必要とする事態に遭遇することは十分予想される。必要な場合、アレバ社の支援を受けるが、自主的技術による事業経営基盤を確立するという本来目的を達成するには、まさにここが正念場である。この目的に適う人的体制が整備されているかについて、客観的立場での確認が不可欠である。
 大幅な工程遅延による再処理事業の財務状況の逼迫化に加えて、総括原価方式料金制度廃止、電力システム改革など電気事業にとって、同事業を継続的に掌握していく上では非常に厳しい局面に遭遇しつつある。しかも当面の課題は、技術的に不透明要因を残しながらできる限り早期に本格運転を達成して、事業基盤確立を果たすという重責である。経産省総合エネルギー調査会原子力小委の会合では、国の直接的関与は不可避という意見が強調されており、今後必要とされる融資を国の債務保証によるなどの方策が考えられるが、現場実務については従来の実績を継承した民力の有効活用が不可欠である。人事権、計画決定権も事業者自身が持つ独立性の高い事業組織とし、強力なリーダーシップを発揮できる実務経験者を配備する必要がある。同時に第三者によるチェックアンドレビューの機能も欠かせない。

2.「もんじゅ」プロジェクトの現状と課題

 「もんじゅ」は海外技術の導入には依存しない純国産技術であり、完全な新技術への挑戦である。高速炉技術の研究段階から実用化につなぐ中間点として、高速炉開発プロセスの最重要段階に位置づけられている(原型炉の位置づけ)。しかし建設工事が完了し、燃料装荷、臨界を経て出力上昇というところでNa漏洩事故が発生した。以来20年余停止したままであり、その間高速炉技術の前進はゼロ、2~3世代に相当する技術者の入れ替えがあったことになり、技術継承に深刻な懸念を抱かざるをえない。Na漏洩事故後20年間の日本原子力研究開発機構(JAEA)が辿ってきた経緯からして、現状のままの同組織では今後「もんじゅ」プロジェクトを効率的に推進し、完成させることは非常に困難という印象がある。
 JAEAは国の研究機関であり、人事権、計画決定権は文科省が掌握していたため、JAEA自身が「もんじゅ」開発にフリーハンドをもてる状態にはなかった。その結果としてプロジェクト意識が希薄であったといえるのではないか。Na漏洩事故以降、原子力委員会定例会議の公開審議で「もんじゅ」問題に時間を要したとか、行政訴訟対応、地元対応など外部要因理由のために長期間待機状態にあっても、「仕方がない」という対応のあり方に終始し、反発の気力を出すことも許されないというのが実情ではなかったのか。
 「もんじゅ」は研究段階とはいえ原子力発電所そのものであるにもかかわらず、運営管理体制が確立しているとはいえない。JAEAとしては過去に「ふげん」を自力で完成させた例があるが、短期間で閉鎖した。「もんじゅ」にあっては、商用軽水炉発電所のように長期の運転経験に基づく「原子力安全文化」の定着は見えない。JAEAは国の研究機関として基本的に個人の研究成果重視の体質がある。電気事業者は人事、財務両面で支援を行ってきたが、電力からの派遣者も結局はこの体質に同化し、電力経験の成果を十分に活用することはできなかった。最近の原子力規制委員会による1万点にも及ぶ点検不備の指摘はその代表事例である。民間企業にあるような事業トップの切迫した責任感は見えないし、「もんじゅ」プロジェクトの責任者不在という印象が強い。
 以上の理由から「もんじゅ」プロジェクトを確実に推進し、初期の目的を果たすためには開発体制の抜本的改革が必要である。「もんじゅ」が大規模な発電所であることと、高速炉開発という新技術実証の役割があることの両役割を果たすために、この2つの役割を完全に整合させ、責任所在を明確にした新組織体を編成することを最優先に考慮すべきである。この新組織運営は国の財政によるが、高速炉開発という極めて特殊な事業分野であり、しかもリスクレベルの高い事業を着実に完成させる必要がある。トップに強力な指導力ある人材を配備すると共に、人事権、計画決定権を付与する必要がある。さらに国内における高速炉技術基盤確立のためには、「もんじゅ」プラント全体の設備・機器、配置の技術的妥当性を実証するプラントメーカーの存在が欠かせない。

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