再生可能エネルギーの普及策 抜本見直しを(後編)


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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再エネ導入によって温暖化対策は進むのか

 そもそも再エネの導入を拡大する目的はなにか。
 自給率向上というエネルギー安全保障の観点や雇用創出の効果など、再エネ導入には「多様なメリット」があると主張される方が多いが、その本来の目的は温暖化対策として温室効果ガス削減にあったはずだ。
 では、再エネの導入が進めば温室効果ガスの排出量は削減できるのであろうか。ドイツの事例を見てみたい。
 ドイツでは2000年にFITを導入して、再エネによる発電電力量による割合は13年には23.4%を占めるまでになっている。そして、ドイツ連邦環境省が毎年発表している報告で、11年単年では、FITの補助を受けた電気によって約7000万トン、その年のCO2排出量の約8%が削減できたとされている。
 11年の再エネ賦課金(FITによる補助の総額)総額は135億ユーロ。135億ユーロで7000万トンということは、単純に1トンの削減に190ユーロを上回るコストがかかったことになる。
 欧州の排出権取引市場では、最も高値であった08年上半期でもCO2 1トンあたり20ユーロを超える程度であり、現在は3~4ユーロ/CO2 t程度まで価格が下落している。同じ1トンのCO2を削減するならコストが安い方が良いのは当然だ。逆に同じ金額を使えばより多くのCO2を削減することができるのだから。
 その点で実は再エネは、温暖化対策としては費用対効果が悪い、と数々の研究が指摘している。特にFITは「全量を固定の価格で長期間買い取る」ことを約束してしまうので、他の再エネ支援策と比べて消費者負担が大きくなってしまい、CO2 1トンあたりの削減コストもまた高価になってしまうのだ。
 また、実は、再エネの導入は順調に進んでいるのに対し、ドイツのCO2排出量全体では増加するという皮肉な事態が生じてしまっている。12年は、11年と比べて1.6%排出量が増加しているのだ。
 その要因としてアルトマイヤー環境大臣は、石炭火力発電が3.4%、褐炭火力発電が5.1%増加したことを指摘した。これは、自由化された市場と、その外で特別扱いされる再エネが混在することで生じる皮肉である。
 FITによる補助金をもらっているので、再エネの電気は圧倒的に安い値段で市場に売り出される。こうした安い再エネ電源が大量に入ると、市場で取引される電力の価格が低下するため、環境性には優れているものの燃料費の高い天然ガス火力は競争力を失い、CO2排出量は多いけれど安価な石炭・褐炭火力などが優位性を持つようになる。13年、ドイツ国内の褐炭火力の稼働は東西ドイツ合併後最高を記録したと報じられており、アルトマイヤー環境大臣のコメントを裏付けている。
 再エネの導入がCO2削減に直結するわけではなく、市場の変化によっては全体として排出増加となることもありえるということを、ドイツの事例は示している。再エネ導入は、その本来の目的に立ち返り費用対効果の観点を踏まえて普及策の制度設計をしなければならない。

再エネ普及策の今後

 日本における再エネは、いまだ発電電力量の5%程度にとどまっており、その普及拡大が重要な課題であることには異論がないだろう。しかし、あくまで再エネは発電の一方途に過ぎず、エネルギーミックス全体として3Eのバランスの中で考えねばならない。
 FITの導入を定めた再生可能エネルギー特別措置法は、その附則の10条において、見直しのポイントを定めている。この定めに従い、制度の見直しを行うべきであろう。すでに導入量が過大になりすぎたメガソーラーの買取停止、買取単価の抜本的見直し、買取単価見直し頻度の向上、設備認定のタイミングを設備の運転開始時点に改めることなどが求められる。しかし、ここまで問題点が明らかになっている以上、FIT制度そのものを廃止し、再エネ普及策を根本から見直すことも真剣に検討されるべきであろう。今後電力システム改革により自由化が進展する中で、再エネだけが究極の総括原価主義におかれることによる不具合もあるからだ。
 今後、消費税が上がり、原子力発電所の停止長期化により電気料金が上がり、そこに再エネの賦課金上昇が加わる。この状況を現実感を持って受け止め、早急に議論する必要がある。

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