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COP21に向けての重要な提案:化石燃料消費の節減こそが求められなければならない(その1)

米中首脳が温室効果ガスの削減目標で合意したと言われているが


東京工業大学名誉教授


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米中の合意は、地球温暖化対策の推進を期待させるか?

 米中が首脳会談で、地球温暖化対策としての温室効果ガス(CO2)の排出削減目標に合意したとの報道(朝日新聞 2014/11/13 )によると、米国は、05年比で、20 年までに17 % 程度減、25 年までに26 ~ 28 % 減とされている。一方、中国の目標は、20 年までに、05 年比で、国内総生産(GDP)あたりのCO2排出量を40 ~ 45 % 減とし、2030 年を排出量のピークにするとしている。
 エネルギー経済研究所データ(エネ研データ、文献1-1 )に記載されているIEA(国際エネルギー機関)のデータから、CO2 排出量の多い各国の11年の対世界CO2排出量の比率(%)の値を計算して、表 1-1 に示した。この排出量比率の合計で43.5 %の米中が、有効な削減案に合意したのであれば、世界のCO2排出削減に大きく貢献し、来年(2015年)末に予定されている各国のCO2排出枠組みの合意を促すものとの期待してよいはずである。

表1-1

米中で合意した中国の削減目標値を推算して見る

 今回の米中の合意案で、米国のCO2排出削減目標からは、上記の文言通り、直ちに、20年、25年のCO2の排出量の目標値が計算できる。一方、中国の場合、GDPあたりのCO2排出量(同じ年のCO2排出量とGDPの比、CO2/GDP比と略記)を基準にしてCO2の排出削減を図るとしている。例えば、中国の削減案では、20年のCO2/GDP比を05年比で40 ~45 %とあるが、05年のCO2排出量 5,379 百万トン、GDP 34,990億ドル(文献1-1 )から、CO2/GDP比=1.537 kg/ドルと計算され、この42.5 % ( 40 ~ 45 %の平均 ) 減の値は0.884 kg/ドルとなる。
 IEAのデータ(文献1-1)から、米国、中国を含むCO2排出量の多い各国(表1-1参照)のCO2/GDP比 の値の年次変化を図1-1 に示してみた。この図 1-1に見られるように、新興国としての中国のCO2/GDP比の値が先進国の値に比べて大きいのは、世界経済の発展につれて、製造業などCO2を多量に排出する産業が先進国から新興国に移転したことによるもので、特に、急速な経済成長を続けている中国では、CO2排出量削減の計画に際し、このCO2/GDP比の大きな年次変化を考慮する必要があるとされたと考えられる。

図 1-1

 この図1-1を見ると、20年 の中国におけるCO2/GDP比の目標値0.884 kg/ドルは、ほぼ妥当な設定と考えることができる。しかし、これだけでは、肝心のCO2の排出量を決めることができない。20 年のCO2排出量を求めるためには、20年までの平均のGDPの伸びを推定する必要がある。中国におけるGDPを指標とした経済成長の高い伸びも、世界不況の影響で、現在、顕著な停滞を示している。バブルの崩壊が懸念されるなかで、敢えてこのGDPの伸び率の予測値の公表を避けたのではないかと推測される。ここでは、11 ~ 20 年の平均のGDPの伸び率として、7 % を仮定すると、11年から20年の9年間のGDPの増加は、11年比で ( 1.07 )9 = 1.84 倍となる。したがって、11年のGDP 6,503 ×109 ドル(文献 1-1)から、20年のCO2排出量の目標値は、
  ( 6,503×109 ドル)×1.84 × ( 0.000884 トン/ドル) = 10,580百万トン
と推算される。

米中合意の結果を、世界のCO2排出量の枠組み決定に生かすことができるか?

 目標年を20年、25年(一部30年)とした米中を含むCO2排出量の大きい各国のCO2削減計画の公表値を朝日新聞(2014/11/13)から再録させて貰い、表1-2に示した。この表1-2を基にして計算した目標年の各国のCO2排出量の値を、IEAにより与えられたCO2排出量の年次変化(1971 ~ 2011年)のデータ(文献1-1 )とともに図1-2 に示した。

表 1-2

図 1-2

 図1-2 から、各国のCO2排出量の値が、先進国としての米国とEU27では2000年以降の年次変化および目標年の値でも、顕著な減少を示しているのに対し、日本での削減量目標の値はごく僅かである。これが、いま、日本が地球温暖化対策に後ろ向きだと言われている理由であろう。一方、新興国では、排出量削減とは言っているが、今後も経済成長を継続する必要があるので、当面のCO2排出量の増加は止むを得ないとしている。特に、中国では、過去の加速度的な年次増加の継続の影響で、20 年の目標は、自国の05年比で 1.8倍、米国の2 倍にも達すると予測されている。30年頃をピークとして、以後、減少に転ずるとしている(表1-2参照)が、その根拠となるデータは示されていない。
 さらに注意したいことは、この図1-2 の表示では、表1-2 に示したCO2排出大国の米中以外の各国の削減目標が、地球温暖化対策を目的としたCO2排出量の削減にどれほど貢献するか、したがって、2015年末に開催が予定されているCOP21(国連気候変動枠組み条約の締約国会議)での各国のCO2排出量の枠組み決定に、果たして役立つ定量的な知見が得られるかどうかの判断ができないことである。では、どうしたらよいのか、この問題については、本稿(その2 )で考察する。
 

<引用文献>

1-1.
日本エネルギー経済研究所編:「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2013年版」、省エネルギーセンター、2014 年

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