低炭素社会実行計画(一般社団法人 日本自動車工業会、一般社団法人 日本自動車車体工業会)

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生産時と走行時の二つのCO2排出抑制

 自動車製造業のCO2排出抑制には二つの側面がある。一つは自動車生産時に排出するCO2の抑制、もう一つは製品であるクルマが走行時に排出するCO2の抑制である。このうち、生産時のCO2 排出抑制については各社がそれぞれに設定した目標の達成に向けた取組を推進するとともに、主要産業界の一員として経団連の「低炭素社会実行計画」にも参画し、各社が協調して業界目標の達成に向け全力で取り組んでいる。また、走行時のCO2排出抑制については、各社が燃費向上や次世代自動車の技術開発・実用化を加速している。

自動車生産時のCO2排出抑制

 「低炭素社会実行計画」には自工会会員14社、車工会会員41社、その他4社の合計59社が参加している。「低炭素社会実行計画」では、1997~2012年度に実施した、「経団連・環境自主行動計画」で対象とした、自動車や部品生産事業所、商用車架装を行う事業所に加え、事務部門、研究開発部門も対象として取組の充実を図っている。
 自動車生産工程は、①車両工場(プレス、塗装、組立など)と、②パワートレイン工場(鋳・鍛造、エンジン組立など)に大別できる。
 2020年度のCO2排出削減目標は1990年度比▲28%の709万トンに設定している(総量削減目標、図1)。目標は、中央環境審議会がBAT(Best Available Technology)として掲げた高性能ボイラー、高性能工業炉、高効率冷凍機、LEDなどの積極導入による省エネ効果を積上げ、更に、将来の革新的生産技術の導入なども見込んで設定したものである。組立産業であるためCO2排出削減の宝の山は見当たらず、全工程にわたり細かい改善の積み重ねでCO2排出量を削減していく必要がある。
 自工会・車工会の取組では、「原単位改善目標」は設定していない。これは、参加各社毎に、①製品が大きく異なること、②部品の内外製比率が大きく異なることなど共通の目標が設定できない事情による。他方、原単位は重要指標であり、「経団連・環境自主行動計画」に引き続き、生産額当たりのCO2排出量を参考原単位指標として取組の評価を行うこととしている。

クルマの技術開発による低炭素社会構築への貢献

 2011年度の日本のCO2 排出量は12億4,100万トン、産業部門は4億1,900万トン、うち、自工会・車工会は569万トンであり、日本全体の0.5%(産業部門の1.4%)という位置付けにある。他方、運輸部門(約90%は自動車交通)のCO2排出量は2億3,000万トンであり、2億700万トンを自動車からの排出とすれば、日本のCO2 排出量の17%程度を占める。世界全体で見ても交通部門のCO2排出量は全体の20%以上を占めており、地球規模の低炭素化には自動車交通部門の低炭素化が欠かせない。
 日本の運輸部門のCO2排出量は2001年の2億6,700万トンをピークに減少に転じ、2011年は2億3000万トンにまで削減している(図2)。これは先進国でも例外である。ここまで削減できたのは、①自動車メーカーによる燃費の良い車や次世代自動車の技術開発と積極的な市場投入(図3)、②自動車購入者の環境意識の高さや政府による購入者への支援政策の実施、③運送事業者の物流効率化努力、④交通流対策などの統合アプローチが功を奏したものである。
 自動車メーカーの役割であるクルマの技術開発については、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの次世代自動車が世界中の注目を集めている。この分野の技術開発・実用化では日本の自動車メーカーが世界を一歩リードしており、今後とも一層の低炭素化に資するクルマ造りを通じて地球規模での環境・エネルギーの課題解決に貢献していく。

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