ミニ・マイクロ水力発電


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 再生可能エネルギーによって発電された電力を、従来よりもかなり高く買い取ることを電力会社に買い取ることを義務づけし、その価格を事業開始から10~20年保証するという固定価格買取制度が発足してから1年が経過した。2年度目に入って価格は引き下げられたが、3年間は事業性を失わないようにするという方針から、その下げ幅は太陽光で10%ほどと小さい。この制度が適用されるには、経済産業省の設備認定を受けなければならない。
 制度導入当初から予想されたように、スペースさえ確保できれば設備自体に複雑さがない太陽光発電、特に規模の大きいメガソーラーの設置プロジェクトが爆発的に増えている。当初の買取価格が適用される初年度の認定受付締め切りである2月に向けて申請が殺到し、認定された発電規模は急増した。これらプロジェクトは通常認定を受けて後に着工するから、おそらく今年中にこれが実稼動設備として大量に追加されることになる。しかし、電力会社は送電系統管理上問題が出ると判断した場合、接続を拒否したり、追加の設備を求めることができるために、設備認定を受けた後に事業化を断念するものかなり出ているとも言われる。
 固定価格買取制度の導入によってこれから着実に設置規模を増やすのは、バイオマス発電と千キロワット以下の小水力発電だろう。発電出力が変動しないために電力会社は受け入れやすく、事業性の判断がしやすいからだ。これまで、燃料調達や地域特性などのために事業計画策定に時間がかかっていたのが、今年に入って具体化するものが増えている。バイオマス発電は火力発電であるため数千キロワット規模のものとなるが、小水力発電は数十、数百キロワット単位の規模のものが中心となる。件数で数えれば、小水力発電の方が圧倒的に多いはずだ。 
 小水力発電について筆者が興味を高めているのは、固定価格買取制度を利用して電力を電力会社に売ることを想定しない極めて規模の小さい水力発電の設置動向である。数ワットからせいぜい数キロワットの規模しかないもので、ミニ、あるいは、マイクロ、ピコ水力発電と呼ばれるものだ。蓄電池と併用することによって近傍の街灯とか、公共施設などの電源にする、いわゆるエネルギーの地産地消の見本のような利用となる。森林の多い山地には、小さな川が無数に流れているが、その水の小さなエネルギーで小さな水車やタービンを回して発電させる。 
 奈良県南部は山林が豊富だが、林業は衰退して過疎が進んでいる。奈良県民である筆者も、これを何とか阻止できないものかと考えていた。そこへ今年の1月半ば、吉野町小水力利用推進協議会設立総会と学習会を公民館で開くということを知り、1時間半以上かかるところだったが少なからず野次馬的な関心から参加した。出席者は少ないだろうと思っていたのだが、会場はほぼ一杯。主催者の予想を遙かに上回る60人近くが集まり、学習会では、水力発電の基本を教わるのに続いて、伏見工業高校の先生から、生徒が昔は多く使われていた螺旋水車を手作りして実験しているという内容の紹介があった。手作りという点に感心したが、聴衆からどんどん質問が出て熱気を帯びた会合だったことにも感動。さらには、昔小川を使って発電していた例があり、当時の発電機が納屋に保存されていたということも知った。
 ここで確信したのは、このようなごく小規模な水力発電が幾つも設置可能だとすれば、売電によって利益を得ることはできないが、それを上回る価値、すなわち、地域の活性化を生み出す原動力になるだろうということだ。いま、このようなプロジェクトが全国で進められている。一ヶ月後、この吉野町のプロジェクトが、マイクロ規模のものを手作りする会合を、水流がすぐ傍を流れる場所で開いたのにも参加してみた。
 参加者は40名近く。5班に分かれて、LED前照灯をつけるのに使われる自転車の前輪(タイヤはない)にアルミ板の水車羽根を、予め開けて貰っていた穴に小さなねじで何枚も取り付ける作業。意外に手間がかかったが、皆で協力して作り上げたのが1時間ほど後。できあがったものを近くのせせらぎといって良い小川に持っていった。一時的にせき止めてパイプで噴き出すようにしたところに設置すると見事に回り、LED電球が点灯したときにはみんな手を叩いて喜んだ。同じようなものが山奥の農家の門前を流れる小川に設置されて、街灯として利用されているという。
 これをきっかけにして吉野町のあちこちで地元産の杉材を使った3メートル規模のミニ水車を手作りするプロジェクトが結成されるようになった。ミニであっても常時発電するとなると、水利権との関わりもあるし、流域の住民の合意も得なければならない。そのための会合も開かれるようになって、過疎地域で失われつつある連帯感が高まるようになったそうだ。これがさらなる新しいプロジェクトを具体化させる原動力にもなっている。

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 送電系統に接続される規模の小水力発電が着実に増えるのと並行して、統計には量として表示できないほどのミニ水力発電設置件数も急速に増えるだろう。これは、地元自治体の支援も得やすいはずだし、地元の人達がボランティアとしてプロジェクトに参加して、製作や維持管理にも貢献できる。このようにごく小さな水力発電が、小規模な太陽光発電や風力発電、蓄電池と組みあわされて、地域の電力需要に僅かでも対応できるとすれば、集落や街区単位で利用する独立電源としての存在となって、地域の力と魅力を押し上げるエネルギーになると期待している。

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