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私的京都議定書始末記(その9)

-<エネルギーマルチ>転戦記-


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授


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 次のターゲットは、アジア太平洋地域のマルチプロセスであるAPEC、具体的には5月のAPECエネルギー大臣会合(ダーウィン)である。APECは先進国のみのIEAと異なり、中国、ASEAN諸国の主要新興国国が入っているため、よりハードルが高いが、ここで省エネ目標、セクター別アプローチを打ち込むことができれば大きな意義がある。更にAPECではエネルギー分野でのピアレビュープロセスを導入したいと考えていた。APECには小規模とはいえ事務局も存在し、特にエネルギー分野ではアジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)も存在している。また、IEAでピアレビューを経験している米国、カナダ、豪州、NZ、韓国が加盟国になっており、支持を得やすい。IEAでの経験を踏まえ、ピアレビューカルチャーを非OECD諸国にも広めたいと持っていた私にとって、APECは絶好の機会だった。もちろん、当初、途上国からの反応は消極的だったが、議長国豪州と緊密に連絡をとりつつ、以下の2つのパラグラフを盛り込むことに成功した。豪州はAPECエネルギー作業部会(EWG)の発足以来、ずっと議長を続けており、日本とは元来この分野で良好な協力関係にあった。また豪州は2007年のAPEC議長国として、9月のAPECサミットに向け、通常の首脳宣言とは別途、「気候変動、エネルギーセキュリティ、クリーン開発に関するシドニー宣言」を出し、その中でAPEC域内全体のエネルギー原単位改善の数値目標を盛り込むことを目論んでいた。豪州から内々に日本に対し、このアイデアに対する支持要請があったので、「もちろん支持する。ただし域内全体のエコノミーワイドのエネルギー原単位目標だけでは誰も当事者意識を持たない。それを実効あらしめるためには、各国がセクター別アプローチも使いつつ、省エネ目標を設定し、その進捗状況をモニターするような枠組みが必要ではないか」と持ちかけた。豪州はこれに賛成し、我々の出したインプットをドラフト案に盛り込んでくれたわけである。省エネ目標の実施状況を、自主的なピアレビューメカニズムを通じてモニターするという考え方は、先進国、途上国が参加する場では恐らく初めてのことであった。PREE(Peer Review for Energy Efficiency)と呼ばれるレビューメカニズムについては、その後、しっかりしたガイドラインができ、これまでにNZ、チリ、ベトナム、タイ、マレーシアがレビューを受けている。

(パラ20)(柱書き省略)

 We encourage APEC economies to individually set goals and formulate action plans for improving energy efficiency on an overall and/or sector basis.
 We direct the EWG(Energy Working Group) to collaborate with the IEA to develop energy efficiency indicators and compile best practices that can be used to help formulate and track progress towards such voluntary goals and action plans.
 We direct the EWG to strengthen efforts to share information on energy efficiency policies and measures, identify effective energy efficiency approaches and review progress towards efficiency goals.

(パラ23)(柱書き省略)

 We direct the EWG to develop a voluntary Energy Peer Review Mechanism, with an initial focus on progress toward attaining energy efficiency goals.
APECエネルギー大臣会合(2007年5月)


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