地球温暖化が止まっている?

エコノミスト誌記事が引き起こす波紋


国際環境経済研究所主席研究員、JFEスチール技術企画部理事 地球環境グループリーダー


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」6月号からの転載。)

「微妙な問題」

 本年3月30日付の英「エコノミスト」誌が上記タイトルの記事を掲載して静かな波紋を引き起こしている。いわく「温室効果ガスの排出が増え続けているにもかかわらず、過去15年以上地表の大気温度は横ばいを続けている」。以下、本稿では同記事の内容を引用・紹介しつつ、問題の背景について解説する。
 「2000年から2010年にかけての温室効果ガスの累積排出量は1000億トンに上り、これは1750 年以来、人類が排出したCO2の4分の1に上る。しかしNASAゴッダート宇宙研究所のハンセン所長によれば、世界の平均気温はここ10年以上上昇していない」という。この温暖化停滞のニュースは驚きをもって迎えられたが、実はこれは気象学者の間では周知の事実だったようだ。

不都合な真実?

 昨年12月に英国気象庁(Met Office)が地球気温の最新のトレンドと予測を発表した注1) 。図1を見ると、世界の平均気温が1998年ごろまで急上昇を続け、その後横ばいとなっていることが見て取れる。2017年までの予想を見てもほぼこの足踏み傾向は続くとされているが、この発表は年明けから英国で話題となっていた。
 実は同庁が2011 年末に発表した同様の予想では、17年にかけて急激な気温上昇が続くとされており、1970年代から直線的に温暖化が進んでいく姿が示されていたのである(図2)。つまり昨年末の予想改定は、2000年代に入ってからの温暖化の停滞が実績として決定的になってきたことを受け、将来予測を大幅に下方修正したものとみられるが、その改定が、メディアが休暇に入り、翌朝の新聞が休刊となるクリスマスイブに行われたことから、背景にある意図を詮索する記事が、休暇明けのロンドン各紙を賑わしたのである。

注1)
英国気象庁ハドレイセンターは、米NASA、米大洋大気庁(NOAA)と並ぶ世界3大気候データベースを管理している。