マイクログリッドの普及


YSエネルギー・リサーチ 代表


 米国で再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上に熱心な州としてカリフォルニア州が日本では紹介されることが多い。ところが、ニューヨーク州もこれに劣らず積極的なエネルギー政策を策定して目標達成に取り組んでいる。同州のスマートグリッド・コンソーシアムが出した2013年白書にも記載されているが、ニューヨーク州のエネルギー政策目標として、2015年までにクリーンな再生可能エネルギーからの電力比率を30%にする、エネルギー消費を15%削減する、二酸化炭素排出量を10%落とす、ことが掲げられている。

 ニューヨーク州には一瞬の停電も許されないところも多く、安定した電力供給が確保されなければ、世界経済にも影響を与えるといって過言ではない。クオモ州知事はこの電力供給の安定性確保に向けて、2012年にエネルギー・ハイウエイ構想を打ち出し、送電系統の増強と品質強化に向けたスマートグリッドの導入に取り組んでいるが、系統のスマートグリッド化は変動の大きい自然エネルギーを大幅に導入するためにも不可欠のものである。

 このスマートグリッド化に貢献する重要なものにマイクログリッドがある。その役割が、昨年10月29日に米国東部沿岸を襲ったハリケーン・サンディーによって図らずも認識された。暴風雨は送電系統に大きな被害をもたらし、ほぼ860万人の人達への電力供給が止まり、12万人は2週間以上の停電を経験したのだが、ニューヨークの株式取引所すら2日間にわたって機能を停止したこの大停電の中で、電力供給を継続できた建物や施設があったことが注目されたのだった。

 ニューヨーク大学とニュージャージー州にあるプリンストン大学のキャンパス、メリーランド州の連邦食品医薬品局ホワイトオーク研究所などがその例として紹介されている。この事例に共通するのは、一般的によく使われている非常用電源が稼動したのではなく、日頃からガスコージェネレーションが電力と熱を継続して供給しており、今回の大停電時には、施設内部の電力系統が外部の系統とは切り離されて(アイランディング)、独自の系統・負荷制御を行うマイクログリッドとして機能したということである。

 同じような事例が日本でも知られている。2011年の夏に東京地区で計画停電が実施された時、港区の中心にある六本木ヒルズは、周辺が停電したときにも電気の供給が途絶えなかった。ここもガスコージェネレーションによるエネルギー供給が基盤になっていて、系統から切り離しても独立運転ができるように設計されていたのである。当面日本の電力需給が改善する見込みが立たない中、電力供給の中断や削減によって事業が大きな影響を受ける企業・施設などでも、このようなマイクログリッドの採用をしようとするプロジェクトが幾つも立ち上がっていると聞く。

 欧米だけでなく中国などでもマイクログリッドの普及に向けた活発な動きが見られるが、日本はその競争の中で有利なポジションにあるのではないかと考えている。最近次々に報じられるように、業務向け規模の蓄電池の商品化が拡大し、その価格が急速に下がりつつあるからだ。従来型の発電方式や燃料電池、太陽光発電など多様な電源の円滑な運用を推進する要として蓄電池が果たす役割が大きくなることは確実である。そして、これを取り込んで日本で開発されるマイクログリッドの制御システムが世界に進出し、エネルギーの安定供給に貢献することを期待している。

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