2030年に向けたエネルギー政策への期待
塩沢 文朗
国際環境経済研究所主席研究員、元内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」サブ・プログラムディレクター
2030年に向けたエネルギー政策が議論されています。原子力エネルギーへの依存のあり方が焦点となっていますが、考えなければならないことはこの問題だけでしょうか?
エネルギー政策の選択肢
エネルギー政策の議論の背景には、「エネルギー・環境に関する選択肢注1)」で示された2030年の電源構成に関する3つのシナリオがあります。各シナリオともに2030年には10%の節電を含む20%の省エネを行うことを前提とした上で、再生可能エネルギーを最大限導入することに努め、原子力発電を再生可能エネルギーでどれほど置き換えていくかという形で示されています。そして、現時点での政府の基本的考え方は、「2030年代に原発稼動ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」というものです注2)。
エネルギー政策の選択肢で見過ごされている問題
このシナリオの前提にもいろいろ問題がありますが、シナリオが「電源構成」で表されていることにより、日本がそのほとんどを海外に依存している化石燃料のウェイトの大きさの問題(2010年、84%)が見過ごされてしまっているように思います。
一次エネルギー供給全体に着目して、2030年のエネルギー源別の構成を推計してみると、上記の各シナリオは【図1】のようになります。原子力発電の構成を25%で維持したケースでも、化石燃料への依存度は75%、「ゼロシナリオ」では83%という高い水準に留まります。「エネルギー・環境会議」で経済産業大臣が説明しているように注3)、電源の35~25%に再生可能エネルギーを導入することは非常にチャレンジングな目標なので、化石燃料への依存度が一層高くなるリスクもあります。
注1) 「エネルギー・環境に関する選択肢」、平成24年7月6月29日、エネルギー・環境会議決定。
注2) 「革新的エネルギー・環境戦略」、平成24年9月14日、エネルギー・環境会議決定。
注3) 平成24年9月4日開催、第13回エネルギー環境会議 資料2(経済産業大臣提出資料)