温暖化交渉:COP18を越えて、日本が取るべき交渉スタンスを考える
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
今年のCOP18は、国内外ではあまり注目されていない。その理由は、第一に、日本国内はまだ震災復興が道半ばで、福島原発事故も収束したわけではなく、エネルギー政策は迷走している状態であること。第二に、世界的には、大国での首脳レベルの交代が予想されており、温暖化交渉での大きな進展は望めないこと。最後に、京都議定書第二約束期間にこだわった途上国に対して、EUを除く各国政府の関心が、ポスト京都議定書の枠組みを巡る息の長い交渉をどう進めるかに向いてきたことがある。要は、今年のCOP18はあくまでこれから始まる外交的消耗戦の第一歩であり、2015年の交渉期限目標はまだまだ先だから、燃料消費はセーブしておこうということなのだろう。本稿では、これから始まる交渉において、日本がどのようなスタンスを取っていけばよいかを考えたい。
前提となる3つの認識
その際、前提となる認識として重要な点を、3つ指摘しておく。
第一は、日本の排出量が世界全体の排出量に占める割合が、今後ますます低下していくということだ。1997年の京都議定書採択時には5%だったその割合が、現状4%弱となり、今後の予測(地球環境産業技術研究機構ALPSシナリオ)では、2030年に2%、2050年にはわずか1%に低下する(図)。世界的に見ても、IEAによれば、京都議定書で先進国扱いとなっている国(付属書I国)の排出割合は、2035年には3−4割に低下するとみられており、中国を中心とて非付属書I国の割合が急増すると予測されている。それにつれて、歴史的排出量は両陣営の間で差はなくなり、さらに一人あたり排出量についても、差は残るものの、その差は漸減してくる。
第二に、IPCCの第5次評価報告書が2014年に発表される予定であり、その内容
がどのようなものになるかを見極める必要がある。そもそもIPCCの報告書は、予測を一つにまとめるものでもなければ、政治や行政に対して何らかの勧告をするものでもないのだが、メディアやネット上で数値的なものが一人歩きしたりするものだからだ。
第三に、日本のエネルギー政策の問題がある。すったもんだの末、野田内閣は「2030年年代原発ゼロ」についての正式決定を見送った。しかし、決定関連文書はあいまいな表現が残り、その後も関係者がさまざまな見解を表明していることから、全く不透明な状態になっている。今後、どのような政策が正式なものになっていくのかは、温暖化政策や交渉ポジションにも大きな影響が及ぼすことは間違いないが、予測がつかないというのが現時点でのコンセンサスだろう。