核燃料サイクル対策へのアプローチ


国際環境経済研究所前所長

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原子力問題の本丸—バックエンド問題

 原子力問題のアキレス腱は、バックエンド(使用済核燃料への対応)にあると言われて久しい。実際、高レベル放射性廃棄物の最終処分地は決まっておらず、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」はトラブル続きであり、六ヶ所再処理工場もガラス固化体製造工程の不具合等によって竣工が延期に延期を重ねてきている。

 原発反対の世論に押されて原発を停止しても、既に相当の使用済み核燃料が発生している現状では、バックエンドの解決に至らない。むしろ、逆に問題を複雑化するだけに終わる危険性が高い。

 これまで、原子力委員会はもとより、学術会議その他さまざまな場でこれらの問題について議論されてきている。しかし、これまでの政策方針の積み上げや歴史的背景、外交・安全保障関連の制約、政策転換に伴う政治的・経済的コスト等を真剣に考慮すればするほど、現時点で取りうるオプションは限られている。多くの制度や約束事が相互に絡み合っているため(いわゆる「制度的補完性」)、どこか一つの部分を変更しようとしても、別の制度や約束事も同時並行的かつ整合的に改革する必要が出てくるのである。

 例えば、「核燃料サイクルを放棄して、直接処分に舵を切るべし」としたところで、その実現に当たっては青森県との約束(「再処理事業が見込めないのであれば、使用済み核燃料を施設外に搬出する」との趣旨)をどうするか、事業主体をどうするか、安全性に係る技術評価の不足をどうするのか、またこれまでの再処理等積立金の扱いをどうするかなどの問題を、連立方程式の解を求めるような困難さの中で取り扱っていく必要があるのだ。

 この問題に取り組むアプローチは、大きく分けて三つある。まず、これまで政策の分岐点になってきた時点に針を戻し、その際に検討されたが捨てられたオプションを再度検討することである。第二に、現在までに積み重なってきた事実を全て制約として受け入れ、その前提のもとで完全ではないにしても、漸進的な改善を見込める解を求めることだ。第三のアプローチは、現状の制約要因自体を緩和するよう積極的に働きかけて、解が存在する範囲を拡大することを目指す方法である。