ドイツの電力事情④ 再エネ助成に対する不満が限界に
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
ドイツ消費者団体が電力料金高騰を批判
一般社団法人海外電力調査会が報じるところによれば、ドイツの消費者団体である連邦消費者センター連盟が、再生可能エネルギー導入に関するコスト負担が増え続ける現状は「我慢の限界を超えている」と厳しく批判するコメントを出したという。ドイツの一般家庭が支払う再生可能エネルギー助成金は、2013年には3.59 ユーロセント/kWh から約 5 ユーロセント/kWh に 上昇し、年間負担額は185ユーロ(1万8500円)にもなると予測されている。
ドイツ在住のジャーナリスト熊谷徹氏が電気新聞に寄稿した記事(2012年8月22日”ヨーロッパ通信”)によれば、のノルトライン・ヴェストファーレン州(州都デュッセルドルフ。国内一の人口を誇る)では昨年、約12万人が電力料金を支払うことができずに供給を一時的にストップされたという。電力料金の高騰が市民生活を直撃していることがよくわかるデータだ。
先に紹介した連邦消費者センター連盟は、2012年2セントユーロ/kWhの電力税(環境税)の廃止もしくは現在税率19%の付加価値税を電力については7%に引き下げることを主張しているが、環境大臣は今のところこれを否定しているという。しかしながら、メルケル首相は「2050年までに電力の80%を再生可能エネルギーで賄う」とする新エネルギー政策を掲げているが、それを実現する施策が足下から揺らいでいると言えよう。
再生可能エネルギーの導入拡大という大きな目的には賛同したドイツ国民も、その経済的負担に耐えきれなくなってきているわけだ。日本の産業界が、全量固定価格買取制度の導入前に、経済的影響を冷静に分析すべきと主張した(http://www.kkc.or.jp/ondanka/thought/page7-1.html。より詳しくは、http://www.keidanren.or.jp/policy/2010/076.html)意味もここにある。
日本のエネルギー自給率の低さを考えれば、再生可能エネルギーの導入拡大にもちろん異論はない。しかしながら、その経済的負担の深刻さについての認識を深める必要がある。そうした負担を軽減するため、少なくとも、再生可能エネルギー事業者間においても競争原理を働かせる制度的な工夫をした上で、導入拡大を図っていくべきであろう。第3回において指摘した通り、7月に導入された全量固定価格買取制度は、「査定なき総括原価主義」に他ならない。
*1ユーロ 100円にて換算
参考)
① 電気新聞 2012年8月22日、8月30日、9月5日
② NHK
③ endseurope
④ 一般社団法人海外電力調査会
⑤ 財務省財務総合政策研究所 財政金融統計月報
⑥ 一般社団法人経済広報センター
⑦ 一般社団法人日本経済団体連合会