2012年1月のアーカイブ

  • 2012/01/27

    宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[後編]
    日本のものづくり産業が目指すべき答えは「環境技術立国」

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、電子機器や電子部品の健全な生産、貿易および消費の推進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に貢献し、デジタル・ネットワーク時代を切り拓いていくことを使命としている。東日本大震災後の業界の対応や今後の事業展開などについて、JEITAの環境委員会委員長を務めるパナソニックの宮井真千子役員・環境本部長兼節電本部長に聞いた。(インタビューは2011年9月27日に実施)

    再生可能エネルギーを活用する町づくりの実証実験にも積極参画

    ――2012年7月1日から再生可能エネルギーの全量買取制度が始まります。業界として、パナソニックとしてどのように受けとめていますか。

    宮井真千子氏(以下敬称略):方向的には良いと思うのですが、具体的にいくらで買い取るとかの金額提示がない状況です。買取価格によって、さまざまな経済活動に大きく影響してきますので、良いとも悪いとも提示がない限りなかなか言えないところがあります。パナソニックとしては、再生可能エネルギーの比率を高めていくことは良い方向であると思います。我々は、太陽光発電や省エネ、蓄エネ製品を増やしながら低炭素社会へというビジョンを発信しており、事業的にもエナジーシステム事業の拡大を考えています。

    ――今後の町づくりなどで、再生可能エネルギーの導入に関する実証実験を計画されていると聞きました。

    宮井:パナソニックは、「家まるごとCO2±ゼロ」というコンセプトで、エネルギーを創る「創エネ」、貯める「蓄エネ」、それから「省エネ」といった商材を合わせて、ご家庭のなかでCO2プラスマイナス・ゼロを目指していくというコンセプトを提案しています。さらに、これをビル全体、そして街全体にもという方向で拡大しています。そのなかで今回、もう半年以上前になりますが、低炭素な町づくりとして藤沢市と協働でサステイナブル・スマートタウンの構想を発表しました。
     藤沢市には、もともとパナソニックの工場があったのですが、その跡地を活用し、低炭素な町づくりにプラスして住む人にとっての安全安心な町づくりを目指そうと、藤沢市様とともに計画を進めています。また金融、商社、不動産などの企業にも協業いただいて、官民を挙げた町づくりを進めているところです。

    ――町づくりには地元の方も参画しているのですか。

    宮井:新しく家を建てていくわけですから、それはこれからです。家づくりは当社グループのパナホームが中心となって進めますが、やはり住民の目線でいろいろなことを考えていかなければいけません。住んでいただく方にとって住みよい町になるかどうかが一番のポイントでしょう。

    パナソニックが藤沢市と協働で進める「藤沢サステイナブルスマートタウン」構想。工場跡地を利用して低炭素社会のひな型となる町づくりを目指すと同時に安全安心にも配慮する(資料提供:パナソニック)

  • 2012/01/26

    宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[前編]
    震災を乗り越え、最先端の環境技術で世界をリードしていく

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、電子機器や電子部品の健全な生産、貿易および消費の推進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に貢献し、デジタル・ネットワーク時代を切り拓いていくことを使命としている。東日本大震災後の業界の対応や今後の事業展開などについて、JEITAの環境委員会委員長を務めるパナソニックの宮井真千子役員・環境本部長兼節電本部長に聞いた(インタビューは2011年9月27日に実施)。

    震災で明らかになったサプライチェーンの調達リスク

    ――東日本大震災、そして福島での原発事故により、業界にはどのような影響がありましたか。

    宮井真千子氏(以下敬称略):JEITAの会員企業の中にも被災工場がたくさんありました。特に、東北地方には素材産業やデバイス系の工場がたくさんありますので、組立工場の被災ともあわせてサプライチェーン全体が被災したために事業活動に大きな影響が出たというのが実情です。ただ、それぞれの会社がいろいろな努力を重ねた結果、当初の想定以上に早く復旧して元の姿に戻っていったように思います。

    ――震災直後は、工場が稼働停止しただけでなく、部品の調達ができず大混乱したようですね。

    宮井:素材産業が被災していますので、まずモノが入ってこない。もちろん当初は、工場が被災しているので動かない。工場が動くようになってもなかなかモノが入ってこないという状況でしたので、市場の要求に応えられないケースがたくさんありました。国内だけではなく、海外に製品を供給している素材産業、部品産業も多いので、グローバルに影響が出ました。

     今回、日本にこんなに素材産業があったのだと改めて気づかされたような状況だと思います。日本が与える影響は非常に大きかったと感じています。

    ――部品一つなくても製品を組み立てることができないと私達国民も改めて認識しました。

    宮井:電機・電子業界もしかり、また自動車業界も同様な状況でしたので、国民のみなさまも気づかれたということでしょう。そのときに明らかになってきたのがサプライチェーンでの調達リスクです。

    ――サプライチェーンでの調達リスクを乗り越えるための検討はされていますか。

    宮井:もちろん個々の会社で検討に入っていると思いますし、パナソニックでも適切な対応をしなければいけないと動き始めています。サプライチェーンの上流側に行くと結局は同じ事業者に行きつくこともあり、調達の経路は複雑なうえに樽型のようになっています。そういった現状が徐々に「見える化」されていくなかで、もう少しリスクを分散するなり、調達構造をシンプルにするなり、そうした方向での取り組みが始まっています。

    ――業界のサプライチェーンは、おおよそ復旧したと言ってもよいのでしょうか。

    宮井:電機・電子業界はすそ野が広いので全部がそうだと一概には申し上げられませんが、パナソニックではほぼ元に戻ってきています。

    ――もともと、パナソニックは西の拠点が多いですね。

    宮井:工場もそれ以外の拠点も西日本に多いので、今回の東日本大震災の影響は他の会社に比べると少なかったかもしれません。ただ逆に電力の問題では、関西電力の供給エリア内に工場が多いため、これから切実なものがあるのではと危惧しています。

    宮井真千子(みやい・まちこ)氏。1983年に松下電器産業(現在のパナソニック)に入社。くらし研究所所長、クッキング機器ビジネスユニット長などを経て、2011年4月に役員・環境本部本部長に就任、同7月からは節電本部本部長を兼務。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)では環境委員会委員長を務める

  • 2012/01/26

    北京市、大気の“軽微汚染”からの脱却目指す

     昨年12月、「北京の大気汚染レベルは「軽微汚染か」?」という表題で、北京市の大気汚染に関する米大使館と市当局の論争について報告した。 続きを読む

  • 2012/01/18

    日本の技術を生かすことが温暖化問題解決のカギになる
    関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[後編]

    東日本大震災後、日本政府はエネルギー政策の抜本的な見直しを進めている。表裏一体の地球温暖化問題への対応を含めて、その足元は、いまだ定かではない。日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長を務めるJFEスチールの関田貴司副社長に、日本のあるべきエネルギー論を聞いた。

    エネルギー政策は、感情に流されずに冷静な検討が必要

    ――現在、政府がエネルギー政策の見直しを進めています。これに対して、ご意見を伺えますか。

    関田貴司氏(以下敬称略):私どものお客様は広く産業界全般ですから、産業界が競争力を失えば我々も困る。もちろん、我々も競争力を失うわけにはいきません。エネルギー政策の見直しは、我が国の産業、経済の命運を左右するような重要テーマと考えています。時間軸に沿って整理して、感情に流されない議論、冷静な検討が絶対に必要です。

     今の日本は豊かで、電気は当然来るものだという思い込みがあります。その前提を疑わず、短絡的に「原子力発電が悪」、「再生可能エネルギーは善」とするのは、少々楽観過ぎるのではないかと思います。再生可能エネルギーは基幹電源にはなりえない。当面の基幹電力は火力であり、水力であり、原子力です。たとえば太陽光発電は、夜間は発電できません。冷静に議論を進めないと、我々の子孫が困ることになると思います。

    ――政府に対する要望はありますか。

    関田:今、いろいろな制度などを審議する場が出てきていますが、各省庁がばらばらに対応しているように見えることが少し気になります。エネルギー政策は総合的な観点が必要であり、我が国の命運を左右するような問題ですから、実現可能性を踏まえながら、政府全体として、しっかりした現実的なプランを検討していただきたい。もちろん安全性が最優先ですが、感情論や風評で考えられては困ります。私自身は技術屋ですので、技術に基づいた正確な判断をしてもらいたいと思っています。

    ――再生可能エネルギーについては、どう思いますか。

    関田:「環境と経済は両立し、新しいテクノロジーが日本経済を盛り立て、雇用も生み出す」という主張をいろいろな場で聞きます。しかし、たとえば太陽光発電については、日本で使っている太陽光パネルは、2008年まではほとんどすべてが「メイド・イン・ジャパン」でしたが、2009年以降は毎年シェアを下げ、今では中国での生産が主流となっています。少なくとも、太陽光発電の導入を進めれば雇用が生まれ、新産業が育つという見方は結果として偽りがあります。

    ――日本の「ものづくり産業」はいろいろな課題を抱えていますね。どうしたらいいでしょうか。

    関田:技術開発を国として支援するのは有効な手立てですが、もう一方で、ものづくりを巡る事業環境を改善することが重要です。日本は法人税が高いうえ、諸外国に比べると突出して高い二酸化炭素(CO2)の削減目標を掲げています。行き過ぎた円高とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)構想への消極論も問題です。こうした条件が整わないと、ものづくり産業は海外に移転せざるをえません。空洞化が不可避だと言われる所以です。

     そこまで全体を俯瞰した施策でないと、環境と経済の両立した施策だとは言えないと思います。これは、いろいろな場で申し上げてきました。絵に描いた餅ならまだしも、絵に描いた餅にも全然なっていないということが現実には起こっています。

    関田貴司(せきた・たかし)氏。1975年に川崎製鉄(現在のJFEスチール)に入社。水島製鉄所管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2011年4月に執行役員副社長スチール研究所長に就任、現在に至る。日本鉄鋼連盟では、環境・エネルギー政策委員会委員長として鉄鋼業界をリードする

  • 2012/01/17

    鉄鋼業は東日本大震災をどのように乗り切ったか
    関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[前編]

    西日本への生産シフトや夜間生産へのシフトなど、日本の鉄鋼業は、東日本大震災の打撃からいち早く復旧を果たした。その要因について、日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長を務めるJFEスチールの関田貴司副社長は、「社会に迷惑をかけないことを意識し、日ごろから地震対策に取り組んでいた成果だ」と話す。鉄鋼業は東日本大震災にどのように危機を乗り越えたのか――。

    震災後の復旧は早かったが、自動車などの生産が止まったことが生産に影響

    ――東日本大震災は鉄鋼業界の事業活動にどのような影響を与えたのでしょうか。

    関田貴司氏(以下敬称略):今回の場合、電力が一つキーワードになると思います。わたしの所属するJFEスチールで見ると、電力については自家発電を持っていますので、他の製造業とはちょっと違うところがあります。我が社は東西に製鉄所を持っていますので、西日本へのシフトや生産時間帯の夜間シフトに取り組んでピーク電力を低減しました。また、東京電力の要請に応じて、製鉄所内の発電設備をフル稼働させ、地域社会への給電では微力ながら貢献させていただきました。

    ――サプライチェーンには、どのような影響がありましたか。

    関田:鉄鋼製品を作るためにはいろいろな工業薬品や油脂、塗料などが必要ですが、それらが一部入手困難に陥りました。しかしながら、震災発生直後から情報収集や代替品の調達に努めた結果、なんとか乗り切ることができました。ただ自動車メーカーなど、お客様の生産活動に大きな影響が出たため、JFEスチール本体の生産は比較的早く復旧したのですが、製品を作ってもお客様に出荷できないという問題に直面しました。

     一生懸命に早期復旧を果たし、必要とされる鋼材はサプライできる状況になりましたが、我々の大きなお客様の一つである自動車の生産が止まり、鉄鋼生産面では若干大変な時期もありました。現在は、まったく何の影響もなく100%復旧しています。

    ――鉄鋼業のサプライチェーンは想像以上に復旧が早かったのですね。

    関田:災害に備えて、予め定めていた手順や日頃の訓練がよく機能したのではないかと思います。

    関田貴司(せきた・たかし)氏。1975年に川崎製鉄(現在のJFEスチール)に入社。水島製鉄所管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2011年4月に執行役員副社長スチール研究所長に就任、現在に至る。日本鉄鋼連盟では、環境・エネルギー政策委員会委員長として鉄鋼業界をリードする

  • 2012/01/10

    塩崎保美・日本化学工業協会技術委員会委員長に聞く[後編]
    社会のサステナビリティを支える化学産業

    化学産業は自動車、電機・電子、医薬品、化粧品など他産業に原料や素材を提供し、まさに私たちの暮らしと産業を支えている。震災直後の影響や対応や今後の温暖化対策への取り組み、エネルギー政策について、日本化学工業協会の技術委員会委員長を務める住友化学の塩崎保美常務執行役員に聞いた。

    省エネNO.1で素材を開発するのが化学産業の使命

    ――エネルギー問題は温暖化問題と表裏一体というお考えが塩崎委員長の持論と思いますが、化学業界が温暖化対策に今後どのように取り組むか伺えますか。

    塩崎保美氏(以下敬称略):実は、別の表裏一体の問題があって、国内生産と海外生産の問題も出てきます。ただし、どこで生産しようとも、使用エネルギーを減らしていくことは非常に重要な取り組みです。現在、日本の産業は省エネでは世界最高水準です。今後も、トップをずっとキープし続けることが大事です。同じ製品を作るとしても、省エネ努力をずっと続けていかないと、日本の産業は国際競争力を失ってしまいます。それがまずベースになります。

     一方で、太陽光発電など再生可能エネルギーに利用される素材は、ほとんどすべてといっても過言ではありませんが、化学産業が供給しています。今後もこのような製品を開発し、供給していかなければいけませんし、その製品の製造も、世界NO.1の省エネ、低コストでやらなければならない。それがまさに化学産業のあるべき姿だと思います。

    塩崎保美(しおざき・やすみ)氏。社団法人日本化学工業協会技術委員会委員長。京都大学大学院工学研究課修士課程修了後、1973年4月に住友化学工業(現在の住友化学)に入社。レスポンシブルケア室部長、執行役員などを経て2010年4月に常務執行役員、2012年4月に顧問就任、現在に至る