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松井英生・石油連盟専務理事に聞く[前編]

震災に強いサプライチェーンづくりに転換目指す


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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震災に強いサプライチェーンの構築へ、国にも協力をお願いしたい

松井:少々遅れましたが、我々もラジオ広報や、ポスター、新聞広告などで、「もうしばらく経つと石油は届きますから、買いだめはしないでください」と広報に努めました。整理券を配ったりして、4月10日過ぎにはそういう混乱も殆どなくなり通常の状態になりましたが、周辺にガソリンスタンドが無い空白地帯が残されました。

――それはどこでしょうか。

松井:岩手県の大槌町と陸前高田市、宮城県の南三陸町の3カ所は被害が非常に大きく、ガソリンスタンドが全く無くなってしまった。そこで自衛隊にお願いしてドラム缶にガソリンを詰めて、車への給油をお願いしました。

 これは、実は極めて危険なことでした。被災直後、灯油や軽油はドラム缶から給油しましたが、ガソリンは注ぐ時に金具が当たって火花が散ると爆発する危険がある。あるいは、ドラム缶が空になったとそのままにしておいて、タバコを吸ったら爆発という事態もありうるわけです。安全に給油するため、我々は自衛隊の駐屯地まで持って行き、それから先は自衛隊にお願いしました。この3カ所を中心に、約1000本のドラム缶を自衛隊に買い上げていただきました。

――ドラム缶がとても役立ったわけですね。

松井:ところがドラム缶による供給は、今、普通のビジネスでは全く使われていない。ドラム缶で急に持って来いと言われても、ドラム缶に充填する設備がほとんどない。製油所や油槽所ではタンクローリーに、短い時間に一気に給油する大型の設備しかないわけです。震災直後は限られた設備を使って、徹夜で灯油、軽油、ガソリン合わせて9000本以上のドラム缶に入れました。これも本当に苦労しました。

――ドラム缶出荷設備を装備することも含めて、平時から震災対応力を強化する必要があるということですね。

松井:私が申し上げた問題点が、これからの課題になってくるわけで、震災に強いサプライチェーンを作らないといけません。通信設備も然りです。元売の本社は衛星電話を持っていますが、油槽所にはありませんから、繋がらなかったわけです。ですから、衛星電話も必要になるでしょう。

 全国の在庫がどうなっているかという情報も、リアルタイムで元売の本社に届くようにすることが必要です。タンクローリーにGPS(全地球測位システム)を付けて、今どこを走っているか、どこのスタンドに今どのくらいあるかなど、その情報がIT(情報技術)を活用して把握できるようになるといいですね。

 震災対応力を強化するためには、自家発電も海沿いでなく、少し高いところになければいけない。タンクローリーの出荷レーンも少し高架にする必要があるでしょう。また、石油製品の備蓄を国に持っていただきたい。我々が持っているのはビジネス上で使う操業在庫ですので、余分な在庫は持っていません。一方、国の備蓄は原油で、だいたい拠点で持っていて、末端に近いところにはありません。今後は、民間のタンクを借り上げて製品備蓄をして頂くことを国に提言しております。サプライチェーンの強化とあわせて国にお願いしたいと思います。

ドラム缶を運ぶトラック(出典:石油連盟ホームページより)

(次回につづく)

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