2011年10月のアーカイブ

  • 2011/10/24

    グリーン雇用という「神話」

     温暖化問題で論争の的になっている一つは、いわゆる「グリーン成長」が可能かという点である。具体的には、温暖化政策を進めること(主に規制的手段)で雇用を生み出し、経済発展をもたらすことができるかということだ。

     英国政府はグリーンエネルギー(太陽光や風力など。ここでは水力は含めない)を推進しているが、その政策目的として、エネルギーの安定供給に加えて雇用の創出を挙げている。しかし、本当にそれが可能なのか、懐疑的な見方が英国内から出てきた。エジンバラ大学の経済学者であるゴードン・ヒューズ(Gordon Hughes)教授が最近公表した論文(The Global Warming Policy Foundation GWPF Report 3)は、現実のデータ分析に基づいて、「グリーン雇用は神話だ」と結論づけている。この論文は、単に英国にとどまらず、日本を含む各先進国が同様の経済成長戦略を政策としていることから、大きなインパクトを持つだろう。興味深い分析内容を以下に紹介していく。

  • 2011/10/20

    発送電分離問題の再考①
    10年経過も効果が見えない米国ISO/RTO

     発送電分離問題が東日本大震災を契機として再び注目されている。だが1980年代半ばから、欧米の電気事業再編を含め自由化動向をウオッチしてきた筆者としては、なぜ今、発送電分離なのか不可解な点が多い。わが国では、すでに第4次にわたる制度改革の下で、すでに機能分離されているが、このような形態になった背景には、わが国特有の理由がある。同様に、分離形態は様々であるが、欧米諸国においてもそれぞれの形態に至った独特の背景がある。

     本稿では、わが国同様、民間電気事業者が中心となっている米国における発送電分離形態の1事例である地域送電組織(RTO: Regional Transmission Organization)について評価してみたい。今後、①最もドラスティックに国営事業を民営化し、発送電分離した英国の事例、②EU(欧州連合)の送電事業の所有権分離案にあくまで反対した独・仏など、それぞれの特質を紹介する予定である。今後のわが国における電気制度改革に関わる客観的議論に資すれば幸いである。なお、本稿ではRTOとISO(Independent System Operator)を同義語として使う。

  • 2011/10/12

    製紙業界の化石燃料使用量、1990年度比で25%減に

     日本製紙連合会は、重油や石炭、オイルコークスなどの化石エネルギー利用量が、2010年度は、製品当たりの利用量である原単位換算で前年度比3.3ポイント減少し、基準年である1990年度の74.6%となったことを公表した。これは、製紙連がこのほどまとめた「環境に関する自主行動計画(温暖化対策)」の2011年度フォローアップ調査で明らかになったもの。製紙連は2007年9月に、2008~2012年度の5年間にエネルギー原単位で1990年度比20%削減するという方針を打ち出したが、これで4年連続で目標を達成した。

     フォローアップ調査は、行動計画の進ちょく状況を調べるため、製紙連の非会員企業4社を含む39社を対象に実施。全製紙会社の紙・板紙生産量の87.9%を占める36社104工場・事業所が回答した。調査結果によると、紙・板紙を1t生産する際に使用される化石エネルギーの熱量は1万817MJ(メガジュール)で、1990年度を基点とする指数が74.6%と、2009年度の77.9%から3.3ポイント改善し、目標値の80%を5.4ポイント上回った。

     一方、2010年度の化石エネルギー起源のCO2排出量は1875万tで、原単位換算(紙・板紙の生産量1t当たりの排出量)では0.78tと前年度比4.2ポイント改善した。製紙連は、2008~2012年度のCO2排出量を、原単位換算で1990年度比16%削減することを目標としているが、2010年度は1990年度比で77.4%と、目標値を6.6ポイント上回った。これは、生産プロセスで発生する黒液など再生可能エネルギーの利用が一段と進み、重油や石炭、オイルコークスの使用が減少したためだ。

     製紙連は温暖化防止の取り組みの一環として国内外の植林事業にも力を入れており、所有・管理する植林地を2012年度までに7000km2に拡大する目標を掲げている。2010年度末までの植林面積は、国内1480km2、海外5430km2で、合わせて6910km2となり、目標の99%に達した。植林は紙パルプ原料確保に加え、CO2の吸収固定や炭素の循環利用の観点からも重要で、東京農工大学や筑波大学との間で塩害地や乾燥地のような環境下でも生産性の高い樹種の開発研究にも取り組んでいる。

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