山本隆三 ブログ「エネルギーの常識を疑う」
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2014/05/20
東電を反社会的企業と決めつける、
働く人たちへの視点を欠く経営者吉原 毅 著 「原発ゼロで日本経済は再生する」城南信用金庫の吉原理事長(以下敬称略)の著書「原発ゼロで日本経済は再生する」(角川ONEテーマ21)は原発ゼロを主張する新書だが、エネルギー、電力問題に関する基礎データの間違いが多くある。 続きを読む
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2014/04/16
何がエネルギー貧困を作り出すのか-政策の選択肢
雑誌「プレジデント」の4月14日号に、「地球温暖化か、貧困か」とのサブタイトルで「注目のキーワード‐エネルギー貧困率」についての私のコメントが掲載された。記事の一部が分かり難いので、少し詳しく説明したい。
欧州では、ガス、電気のエネルギー関係料金の支払いに問題がある人が増えている。 続きを読む -
2014/04/10
「電力自由化と再エネ導入が招く停電」‐避ける方法は?
電力システム改革、即ち、小売り自由化、発送電分離のタイムスケジュールが具体化してきたことから、ソフトバンクを初めいくつかの企業が電力事業に関心を示している。事業者が増え消費者の選択肢が増えるのは良いことだが、その前提は競争力のある電気料金と安定的な電力供給が維持されることだ。 続きを読む
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2014/02/19
河野太郎議員の上手だか本当でない説明
原発停止の経済への影響は大きい文藝春秋の新春特別号に衆議院議員の河野太郎氏(以下敬称略)が『「小泉脱原発宣言」を断固支持する』との寄稿を行っている。その前半部分はドイツの電力事情に関する説明だ。河野は13年の11月にドイツを訪問し、調査を行ったとあるが、述べられていることは事実関係を大きく歪めたストーリだ。 続きを読む
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2013/12/19
再生可能エネルギー政策に苦悩する
欧州とアジアから学ぶこと(機関誌「月刊 経団連 2013年12月号」からの転載。)
エネルギー政策で重要な点は、経済性、安全保障、環境性能であり、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)はエネルギー安全保障、温暖化対策上からは非常に望ましい発電源だ。しかし、経済性の観点からは問題が多い。 続きを読む
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2013/12/10
Eating(食料)かHeating(暖房)かを迫られる英国民 エネルギー市場自由化でエネルギー効率も悪化、温暖化対策にも遅れ
1990年から、電力、ガス市場の自由化を行った英国では、2000年に天然ガス生産がピークを打ち減少を始め、直後から天然ガスの輸入が必要になった。生産は年々減少を続け、いま、天然ガス需要の50%以上が輸入だ。
この天然ガス生産の減少は、エネルギー市場にも大きな影響を与えることになった。 続きを読む -
2013/11/07
小泉改革と原発ゼロ論
12年前、多くの国民は小泉改革を支持した。小泉改革の旗印は、01年の所信表明演説に引用された「米百俵の故事」が示すように、「痛みを我慢すれば明るい将来がある」だった。しかし、その成果は結局得られなかった。
実質国内総生産(GDP)は小泉時代の5年間に、輸出増をテコに7.5%成長したものの、名目GDPは全く伸びていない。デフレが止まらなかったためだ。 続きを読む -
2013/09/24
消費税と再生可能エネルギーへの賛否があぶり出す無責任な政党
消費税を引き上げるかどうかの報道が連日のようになされている。消費税が3%上がれば生活が苦しくなるとの理由で引き上げに反対する意見もある。不思議なのは、生活が苦しくなるとして消費税引き上げに反対する団体、政党の多くが再生可能エネルギー(再エネ)推進に賛成していることだ。 続きを読む
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2013/08/26
感情で決まる日本のエネルギー政策と政治で決まるドイツのエネルギー政策
6月末に世界最古のビジネススクールESCP Europeパリ校にて、シンガポール国立大学とパリ・アジアセンター共催のエネルギー・環境政策シンポジウムが開催された。中国、インド、日本、シンガポール、欧州の研究者が集まり、各国のエネルギー・環境政策を議論する有益な会合だった。 続きを読む
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2013/07/11
電力市場自由化で英国はついに節電の時代に突入
6月下旬にパリで開催されたEU-アジアのエネルギー・環境政策のシンポジウムに参加し、発表する機会があった。このシンポジウムは中国、インド、日本、シンガポール、EUの研究者10名ほどが参加し、各国のエネルギー政策を議論する大変有意義なものだった。その内容は、参加者の論文としてまとめられ、シンガポール大学が書籍として発行する予定なので、またご報告する機会があると思う。 続きを読む
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2013/06/11
10年後に迫る停電の恐怖
英国では電力自由化の結果、発電設備に対する収益保証がなくなった。ために、巨額の投資が必要でありかつ長期に亘り電気料金で収益を確保する原子力発電所、あるいは燃料価格が不透明であり、歴史的には石炭に対して価格競争力を持っていなかったために稼働率が不透明な天然ガス火力を新設する企業は今後出てこなくなる可能性が強い。既存設備の老朽が進む2020年代には停電が発生する可能性が強いと英国政府は予想している。 続きを読む
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2013/05/13
電力自由化市場での発電所建設には社会主義が必要?
自由化された電力市場では、夏場あるいは冬場の稼働率が高い時にしか利用されない発電設備を建設する投資家はいなくなり、結果老朽化が進み設備が廃棄されるにつれ、やがて設備が不足する事態になる。1年の一時期しか運転されない発電所では売電による収入が少なく、投資家が必要とする収益率を満たさないためだ。さらに問題は、発電所を建設しても長期間に亘りいつも確実に発電できる保証が得られないことだ。競争する他の電源の将来コストが予測できないために、他の電源よりコストが高くなれば、いつも市場で電気が売れるとは限らない。 続きを読む
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2013/04/15
電力自由化が向かう先は総括原価主義?
先月、英国政府の方から温暖化問題への取り組みと電力システム改革の現状についてお話をお伺いし、意見交換を行う機会があった。電力システム改革専門委員会の伊藤元重先生と松村敏弘先生も一緒に出席されていた。
1990年に電力市場を自由化した英国では、老朽化が進む石炭火力設備が廃止された後供給力不足により停電も想定される事態になっている。電力事業者が発電設備を新設すれば良いだけの話だが、自由化された市場では新設を行うかどうかは事業収益次第になる。 続きを読む -
2013/04/01
電力供給も十分にない日本経済はそれでも世界最強なのか
書店の経済書のコーナーには、日本経済について楽観視する書籍が山積みされている。「日本経済は世界から羨ましいと言われ」るほど「最強の経済」らしい。むろん、悲観論の本もあるが、最近は楽観論が圧倒的に棚の場所を占めている。エネルギー関係の企業に勤務されている方が、楽観論の書籍を何冊か買ったと言われていた。こういう本を読むと安心するということだ。 続きを読む
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2013/03/19
東京都の電力販売に感じる違和感
東京都は保有する水力発電所からの電力を平成21年度から10年間の長期契約で東京電力に販売しているが、この電力を来年度から入札により販売することにした。3月15日にその入札結果が発表された。新電力と呼ばれる特定規模電気事業者であるエフパワー社が落札し、その価格は1kWh当たり14.5円と発表されている。今までの都の東電への売却価格は1kWh当たり約9円と報道されており、年間の都の収入は10億円から17億円に増加する。 続きを読む