誤解だらけのエネルギー・環境問題
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2012/12/05
COP18参戦記 day1 (12月2日 日曜日)
今後ともエネルギー政策において、気候変動が大きな制約要因であり続けることは間違いない。国際環境経済研究所では、従前と変わることなく気候変動問題を重要なテーマとして様々な提言や情報提供を行っていく方針であり、その参考とするため気候変動問題に関する最も大きな会議である国連気候変動枠組み条約交渉(COP18/MOP8)に参加させていただいた。 続きを読む
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2012/12/05
ドイツの電力事情⑥ -供給力確保への苦闘-
太陽光・風力など、出力が不安定な電源が大量導入された場合、送電網の整備等の系統安定化対策に加え、人間がコントロールできる安定的な調整電源の維持も必要となる。
欧州各国では電力自由化が進んでおり、その一方で、再生可能エネルギーの導入を政策的に進めてきた。再エネ導入量の増加に伴って、ガスを中心とする火力発電所の稼働率が低下するに伴い、事業者は採算性の悪化した設備を廃止する動きを強めざるを得ない。 続きを読む -
2012/12/04
ドイツの電力事情⑤ -送電網整備の遅れが他国の迷惑に-
太陽光、風力などの再生可能エネルギーは基本的に「太陽任せ、風任せ」であり、間欠性電源と言われる。間欠性電源の導入量が増えるとそれまで見えなかった(正確には、見てこなかった)コストや問題が発生する。その一つが、主として風力発電の大量導入に伴って必要な送電線の整備、もう一つが、太陽と風のご機嫌が悪かった時に備えて人間がコントロールできる発電設備の維持である。ドイツでは固定価格買取制度によって、再エネの大量導入には成功したが、それによってもたらされるこの二つの問題も顕在化してきている。 続きを読む
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2012/11/30
国連気候変動枠組み交渉の転換点
-京都議定書型枠組みの限界と今後の方向性-1997年に開催された国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で採択された京都議定書は、我が国の誇る古都の名前を冠していることもあり、強い思い入れを持っている方もいるだろう。先進国に拘束力ある排出削減義務を負わせた仕組みは、温暖化対策の第一歩としては非常に大きな意義があったと言える。しかし、採択から15年が経って世界経済の牽引役は先進国から新興国に代わり、国際政治の構造も様変わりした。 続きを読む
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2012/10/17
福島原子力事故の責任 -法律の正義と社会的公正-
電力事業は莫大な長期投資を必要とする設備産業である。総括原価主義、地域独占、そして発電単価の安い原子力発電は、法的供給義務と引き換えに電力会社に安定的な収益を蓋然性高く確保させることで、資金調達力を保たせるための「3点セット」であったと言える。それが福島第一原発事故により、原子力発電は民間企業が行うにはあまりに大きなリスクを内包していることが明らかになった。 続きを読む
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2012/09/19
ドイツの電力事情④ 再エネ助成に対する不満が限界に
ドイツの電力事情③において、再エネに対する助成が大きな国民負担となり、再生可能エネルギー法の見直しに向かっていることをお伝えした。その後ドイツ産業界および国民の我慢が限界に達していることを伺わせる事例がいくつか出てきたので紹介したい。 続きを読む
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2012/09/13
隣の芝生は本当に青い?②
-意外に知られていない韓国の電力事情-前回韓国の電気料金が日本より安いと言われる理由について検証した。今回は「アジア各国から安い電気を輸入すればよい」という、ある意味「夢のアイディア」が現実的な解となりうるのかを検証する。 続きを読む
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2012/09/12
隣の芝生は本当に青い? ①
-意外に知られていない韓国の電力事情-日本の電力料金は高い、とよく言われる。実際のところどの程度の差があるのか。昨年の8月に経済産業省資源エネルギー庁がHPに掲載した資料によれば、為替レート換算、購買力平価換算とも2000年時点では、日本の電力料金は住宅用・産業用とも他国と比較して非常に高かった。しかし、この10年、多くの諸外国では電力料金が上昇しているのに対し、日本は安定的に推移しており、その差は縮まっている。 続きを読む
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2012/09/10
原子力損害賠償法の改正に向けて⑥
損害賠償の主体や資力に関する措置、すなわち保険又は/及び国家補償のあり方は、被災者への補償を現実化するための最も重要な課題だ。これまで度々紹介しているように、原子力災害補償専門部会の法学者委員たちは、原賠法立法当時、法制度の構築と同時に、どのような民営保険が可能なのかを検討していた。 続きを読む
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2012/07/28
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ③
前々回①では、
・ドイツの電源計画が自国で産出する褐炭(石炭の中でも品質の悪いもの)を主に、化石燃料を中心とする構成になっていること。
・北部に大量導入した風力発電による電力を消費地である南部に届ける送電線の建設が遅れていること。その不安定な電源が流入する近隣国から苦情が出ていること。 続きを読む -
2012/07/23
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ②
前回ドイツ連邦エネルギー・水道連合会HPのデータをもとに、
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- ドイツの電源計画が自国で産出する褐炭(石炭の中でも品質の悪いもの)を主に、化石燃料を中心とする構成になっていること。
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- 北部に大量導入した風力発電による電力を、消費地である南部に届ける送電線の建設が遅れていること。その不安定な電源が流入する近隣国から苦情が出ていること。 続きを読む
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2012/07/13
原子力損害賠償法の改正に向けて⑤
―電力事業の資金調達力に与えた影響について―国の「援助」とは何か-日本独自のスキームが意味するところ
第1回において、各国の原子力損害賠償制度の共通原則を述べたが、事業者に無限責任を負わせ、国が必要な「援助」を行うとした同法第16条は、我が国独自のスキームである。立法当時の議論を振り返る。 続きを読む
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2012/07/11
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ①
7月1日、日本でもとうとう再生可能エネルギー全量固定価格買い取り制度(Feed in Tariff)がスタートした。
こうした制度を活用して再生可能エネルギー導入に成功し、福島原子力発電所事故後早々に脱原発を宣言したドイツは、今後我が国の電力システムを検討するうえでの「理想像」とも言われている。彼の国を理想として追いかけて、たどり着く先は本当に理想郷なのか。 続きを読む -
2012/07/05
原子力損害賠償法の改正に向けて④
現行の対応スキームから浮かび上がる問題点
免責について-この免責要件に意味はあるか-震災直後に大きな議論となったのは、この東日本大震災が同法第3条第1項ただし書に言う免責要件に該当するレベルの天災地変であったのかということだ。当初東京電力も免責の適用主張を検討していた様子が伺える。 続きを読む
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2012/06/27
原子力損害賠償法の改正に向けて③
現行の対応スキームの整理
現在、原子力損害賠償がどのようなスキームにおいて行われているのか、全体像がつかみづらい状況になっている。東京電力の電気料金値上げに関連して「事故の補償費用も含まれているのではないか」といった声もよく聞かれるため、今回は現行の対応スキームを整理しておきたい。 続きを読む
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2012/06/13
原子力損害賠償法の改正に向けて②
我が国の原子力損害賠償法
我が国では、昭和36年、原賠法及び「原子力損害賠償補償契約に関する法律」(以下、「補償契約法」と言う)が制定された。基本原則は前回述べた各国の原子力賠償制度とほぼ同様であるが、いくつかの特色を持っている。以下に条文を確認するが、全体像を把握するうえで、原子力損害賠償制度が私人対私人の紛争解決を規定する民法の中の特別法として位置づけられていることを、先ずは踏まえておく必要があろう。 続きを読む
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2012/06/08
原子力損害賠償法の改正に向けて①
賠償スキームも含めた「安全・安心」を確立する
昨年3月11日の東日本大震災をきっかけとする東京電力福島第一原子力発電所における事故は、これまで「起こらない」と考えられていた重篤な事故となった。「起こらない」と考えていたのは、技術者達だけでない。万一の事故に際しての被害者への補償について定めた「原子力損害の賠償に関する法律」(以下、「原賠法」と言う)も重要ないくつかの点において曖昧な条文となっており、いわば社会システムとして、原子力の事故に対する備えが出来ていなかったと言える。 続きを読む
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2012/03/21
架空の財布の紐は緩い~経済影響を実感として理解する~
電気料金上昇の本当の影響を考える以前、尾瀬の自然保護活動に関して「仮想評価法(CVM)」という手法を使ってその価値の計測を試みたことがある。ハイカーが押し寄せて自然が荒廃した1960年代の尾瀬の写真と、保護活動により回復した現在の尾瀬の写真を2つ提示し、尾瀬の美しい自然価値に対して自分が支払ってもいいと考える評価額(支払い意思額)を聞いたものだ。 続きを読む
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2012/03/05
先人に学ぶ2 ~ドイツの挫折 太陽光発電の「全量」買取制度、廃止へ~
2012年2月10日の記事 で、ドイツの雑誌シュピーゲル誌掲載の記事から、太陽光発電の全量固定価格買取制度が大きな政治問題に発展していることを紹介した。ドイツでは、太陽光発電のオーナーたちが得た補助金は80億ユーロ(約8600億円)を超えるにもかかわらず、雪の多い冬季は何週間も発電できず、1年間を通してみると3%程度の不安定な電気を生産するに過ぎない。国民の怒りが膨らむのも当然であろう。今回はその続報である。 続きを読む