米国原子力燃料開発への取り組み


環境政策アナリスト

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米国の新型原子炉開発においてキーとなるのはHALEU燃料と呼ばれる高純度低濃縮ウラン(濃縮度5%~20%)の開発である。米国は既存原子力発電所のための燃料についてはこれまでロシア産燃料に依存してきた。しかし、ロシア産燃料を基本的に禁止する法案が2024年に議会を通過しており、2028年にはロシア産燃料を全廃するとしている。そこで米国エネルギー省(DOE)はHALEU燃料及び既存原子力発電所用の燃料製造のために「国防生産法原子燃料コンソーシアム」を設立して数社との間で任意ベースの覚書を結び、採掘、転換、濃縮、再転換、成型加工、リサイクル、再処理の開発を通して燃料サプライチェーンを確立しようとしている。

DOEはこの4月、3by 33キャンペーンを公表した。これは以下の政策、すなわち2033年までに1)安定的でコスト競争力のある国内原子燃料サプライチェーンを促進する 2)新型原子炉開発を加速し、原子燃料サイクルを完結する 3)原子力発電所支援のために人的資源、ファイナンス、イノベーション、協働を育成・連携するために国防生産法フレームワークがどのように活用されるか探っていく、というものである。

これに伴いDOEはいくつかの事業者に対してHALEU燃料製造の提案を用意させようとしている。これに伴い、オラノ社は今年1月テネシー州と共同で遠心分離技術による低濃縮ウラン施設を拡充することを決定した。ウレンコ社は6月ニューメキシコ州における濃縮施設を50%近く拡充することを発表した。この施設はすでに430万SWU(全米濃縮需要の1/3程度)の能力を有し、当面2027年までに70万SWUを追加する計画である。また、ウラン採鉱については地元選出上院議員の強い運動もあり、ワイオミング州において流し込んだ溶液ごとウランを回収するインシチュ採鉱法による採鉱を進めることをウルエネジー社が4月に発表した。

バックエンドについてはDOEが余剰プルトニウム利用プログラムに基づく協議を複数の会社と開始している。DOEは昨年19.7トンの余剰プルト二ウム処分の方法について公募を開始した。オクロ社はニュークレオ社と連携して戦略的パートナーシップによる余剰プルトニウムの成型加工を行うことを発表した。ニュークレオ社は原子力規制委員会(NRC)と先進的な燃料成型加工および小型鉛冷却高速炉の事前申請計画を進めるとしている。加えてシャインテクノロジーズ社は化学処理によるプルト二ウム処分の過程でアメリシウムを回収し精製されたプルトニウムをウランとブレンドすることで新型炉に適した燃料を製造することを提案し、フライブエナジー社はプルトニウムが溶融塩炉の理想的な燃料であるとして電気化学的リサイクル技術を研究するためDOEから補助金を得ている。またエクソダスエナジー社は「国防生産法原子燃料コンソーシアム」などの場を通じて原子燃料サイクルを完結してプルトニウムの利用を進めることの重要性を積極的に発信している。

このように米国に貯蔵されているプルトニウムに新型原子炉開発と絡んで関心が集まっている。しかしながら民主党や核不拡散に慎重な学術団体などは原子燃料サイクルの完結およびプルトニウム利用に長い間反対している。上院ではマーキー議員(民主・マサチューセッツ州)が再処理に対して厳しい発言をしており、下院ではガラメンディ議員(民主・カリフォルニア州)、バイヤー議員(民主・バージニア州)が余剰プルトニウム利用に反対する書簡をトランプ大統領に提出している。彼らの主張は「ならず者国家またはテロリスト」に対して核拡散を助長して米国の不拡散政策に逆行するリスクがあるというものである。現在はまだ表面化していないが、いずれはこの問題に関する対立がより鮮明化することも考えられる。しかし、民主党内部でも再処理に対して異なるアプローチに向かう動きもある。例えば民主党の中でも急進派に属するオカシオ=コルテス下院議員(民主・ニューヨーク州)は福島を訪れた後、日仏米の再処理政策の違いについて関係者と情報共有している。彼女ははっきりと再処理政策を支持すると発言しているわけではないが、同じ急進派のサンダース上院議員のような「頑固な」原子力反対派とは違ってよりオープンな立場にいる。こうした点は注目するべきである。

現在、トランプ政権はプルトニウム利用を前進させようとするモーメンタムを得ている。この11月に予定されている中間選挙でかりに民主党が勢力を伸ばすとして、例えば下院だけの過半数であれば政権幹部を呼び公聴会などを開催するだけで、これらの動きを中止させるだけの力はもたないであろう。上下両院で民主党が過半数を確保しても上院の場合さまざまな立法には事実上60議席を必要とするためハードルは高く議会で再処理・プルトニウム利用を主要なテーマにするのは難しい。結果的にトランプ政権は残り2年間でどれだけ本政策を前進させられるかということがポイントになるであろう。