したたかな欧州緑の党
DC反対運動ターゲットに政策衣替え
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
(「エネルギー政策研究会「EPレポート」2026年4月1日 2171号」より転載)
2021年12月にドイツでは緑の党が参加する3党連立政権が発足した。緑の党は21年の総選挙前の世論調査では支持率25%で第一党になったほど支持を集めた。しかし、22年のエネルギー危機により支持は大きく落ち込んだ。
中央と州で異なる路線
エネルギー価格上昇に苦しむ国民の過半は原発の継続利用を望んだが、緑の党が党是とする脱原発の旗を降ろすはずもなかった。緑の党出身の経済気候保護大臣は、22年末に原発を停止しても電力供給に不安はないとうそぶいたが、結局翌年4月まで運転せざるを得なかった。
外務大臣は「今まで脱原発に使った金を溝に捨てることはできない」と発言し、経済学の基礎であるサンクコストの概念も知らないことを白日の下にさらした。
これでは国民の信頼を失うのは当然だ。今年3月中旬の支持率は12%。右派とされるドイツのための選択肢の半分しかない。そんな中、3月上旬のバーデン=ヴュルテンベルク州議会選挙で、緑の党が僅差でキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)を上回り第一党になった。最近の世論調査では政府の温暖化対策への批判が多く、気候変動の関心は高くなかった。選挙の争点として有権者が挙げたのも、経済がトップの29%で、気候変動とエネルギーは16%だった。
それでも緑の党が勝てたのは、戦略を変えたからだ。同州は自動車産業の中心地で豊かな州だが、11年から緑の党が首相を出していた。今回の選挙結果を受け、CDU/CSUと緑の党の連立政権が続き、緑の党が引き続き首相を出すことになる。支持率が下がり、有権者の関心が温暖化問題から離れる中で、緑の党が第一党を維持した理由は、その政策にある。内燃機関自動車の廃止反対、排出ガス規制未達の自動車メーカーへの罰則反対と聞けば、緑の党の政策とは思えない。州の緑の党は中央とは異なる独自の主張をした結果、政権を維持できた。
生活費上昇問題を追い風に
英国の緑の党はドイツほど強い支持を集めておらず、支持率が10%を超えることは滅多になかった。22年のエネルギー危機以降の支持率は5%前後で推移していたが、25年秋から急速に支持を伸ばし、今年3月の支持率は16%に達している。党員数も倍増した。一つの理由は昨年9月に就任したポランスキー新党首の効果とされるが、もう一つの大きな理由は、データセンター(DC)反対運動が広がり、緑の党への支持が増えたためとされる。
緑の党を新たに支持するようになった有権者の調査では、関心を持つのは生活費(52%)、国民保健システム(50%)、貧困(35%)であり、温暖化・環境問題への関心は第4位の34%しかない。経済問題に関心を持つ有権者が緑の党の支持に変わった例も多いとされる。生活費の上昇に関心の高い有権者が懸念しているのが、DCの増設による電気料金と水道代の値上がりだ。
2月26日にマンチェスター市と近郊を含む選挙区で、労働党を除名された元保険大臣の辞任に伴う補欠選挙があった。労働党は1931年以来守ってきた議席を失い、緑の党が議席を獲得した。得票率は緑の党41%、リフォームUK29%、労働党25%。労働党は24年の総選挙から得票率を半減させており、2年前に労働党を支持していた多くの有権者が緑の党に投票したようだ。
英国は米国、ドイツに次ぎ世界3位のDC保有国だが、米国の約10分の1の数のDCしかなく、容量では20分の1以下、世界の2%のシェアだ。しかし、米国と同様、これからはハイパースケールと呼ばれる大規模センターを中心に増加すると見込まれている。
議会下院図書館によると、24年時点のDC容量160万kWは、30年には最大630万kWに増加し、現在英国の電力需要の2.5%を占める電力消費量は4倍になると想定される。英国政府はAIの計算需要だけで30年までに600万kWの容量が必要としている。
ロンドンが100万kWの容量を持ちDCの中心だが、土地利用と送電網の能力から飽和状態に達しつつある。一方、24年の産業用電力料金は1kWh当たり21.7ペンスから32.0ペンス、円換算で46円から68円になり、欧州では最も高い。電力需要増に合わせ送電網の整備も必要になり、今後電気料金の上昇が見込まれる。さらに、冷却用の水の需要も増加する。
活動家の新たな矛先
英国の環境活動家は、DCが環境を汚染し、50年ネットゼロ目標達成を不可能にするとして反対活動を展開している。2月27日にミリバンド・エネルギー相が「データセンターが英国のネットゼロの取り組みに及ぼす影響は不透明」と述べたと伝えられ、活動家からのDCに反対する声が一層大きくなった。実際、27日、28日に全英各地で反DCデモが展開された。
エネルギー危機により、市民の関心が温暖化から価格や安定供給に移る中で、存在感を薄くしていた環境政党は、現実路線に舵を切るか、あるいは新しいテーマで支持を維持している。
生成AIは生産性向上や給与増の切り札になるが、環境至上主義の活動家には格好の新しいターゲットになったようだ。しかし、給与増にはDCが必要だが、活動家は理解できないのだろうか。それとも豊かなのだろうか。













