太陽光発電(PV)パネルの大量廃棄時代が来る

―始められたPVパネル廃棄費用積み立て制度―


国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長

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 太陽光発電(PV)パネルのリサイクルや廃棄に関心が集まっている。

2億枚のPVパネルが廃棄される

 伝えられるところでは、2035年から2040年頃にかけて、PVパネル廃棄のピークが来るという。推計では、その量、パネル・2億枚、年間発生量17~28万トン(資源エネルギー庁)に及ぶ。2039年には、約78万トンが廃棄対象となり産業廃棄物最終処分量の6%にもなるともいう(参議院第三特別調査室:環境省推計…製品寿命25年)。ネットには、廃棄に要する費用の試算なども見られる。

 PVパネル廃棄では量も問題だが、パネルによっては、鉛、カドミュウム、セレンなど重金属が含まれるものもあるようなので、廃棄物管理は、しっかりとやってもらわなくてはいけない。

FITが追い風となり猛烈な増加

 ご存じのとおり、2012年民主党政権時代に、再生可能エネルギーの固定価格優先買取制度:FIT(Feed in Tariff)が制定された。
 再エネ発電事業者に対して20年間安定報酬を保証するこの制度が大きな追い風となって、太陽光発電は驚くほど急増した。その結果が冒頭に述べたPVパネル2億枚である。
 太陽光発電は、2021年実績で見ると発電量:863億kWh。総発電量の8.5%を占めるまでになっている(BP統計)。

全ての電気消費者から徴収されている再エネ賦課金

 筆者は、FIT制度は不公正制度だと考えている。
 環境に良いという再エネ発電開発促進のためとはいえ、電気を使う全家計に対して有無を言わせずに賦課金を課している。生活保護世帯など低所得家計に対する配慮などない。産業需要家の場合にも、ほんの一部に賦課金の減免措置を受ける企業はあるが、原則的には全ての企業から賦課金が徴取されている。
 FITによる国民負担総額は、2022 年度で総額4兆円を超えるという。消費税は、1%で約2.5兆円だから、FITによる賦課金の総額は、消費税額1%の1.6倍に相当する。それも、今後さらに重くなるようだ。消費税と再エネ賦課金双方を合わせると、私たちの財布にとっての負担率は11%をはるかに超える。

賦課金収入の使途は再エネ発電事業者の報酬に

 筆者がこの制度を社会的公正さに欠けるもので、問題だと考えているのは、次のような点に問題があると考えるからだ。
 税金であれば税収の使途は何らかの“公”の目的に使われる。
 しかし、この再エネ賦課金は、ソーラー発電などの事業者の報酬、つまり利益に回される。この点について資源エネルギー庁は、websiteで、次のように説明している。

皆様から集めた再エネ賦課金は、電気事業者が買取制度で電気を買い取るための費用に回され、最終的には再生可能エネルギーで電気をつくっている方に届きます。

(下線:筆者)

ネットに流れた目を疑う場面

 思い出すことがある。この制度ができた直後、ネットに流れたある場面に驚いたのだった。
 FIT法案成立後、菅直人元総理は、メガソ-ラー事業も営むソフトバンクの孫社長や環境省の審議官たちと法案成立を祝って祝杯を挙げた。ネットにその場面が流れたのだった。
 思い起こせば、この制度は菅直人元総理が総理大臣職の就去を“質(カタ)”にして法案を通した。前述の祝杯の場面を見て、FIT成立の背景の裏事情を見た思いがした。さらに、再生可能エネルギー発電が、我が国のエネルギー自立に役立つうえに環境にも良いという法案設立の趣旨すらも色あせる印象を持った。

PVパネル廃棄時代に備えて決められたルール

 冒頭に述べたとおり、PVパネル大量廃棄時代に備えて、資源エネルギー庁は、PVパネルの廃棄が適切に行われるよう廃棄費用を積み立てるルールを決めた。
 このルールは、今年7月から実施されている(2020年6月成立「エネルギー供給強靱化法による再エネ 特措法の改正」により、廃棄等費用の積立制度を措置)。
 原子力発電の場合には、高・低レベルの放射性廃棄物の最終処分の費用は、原子力発電による電力の利用者全員に負担が課され、電気料金の一部として徴取されている。PVパネル廃棄に対する今回の措置:廃棄費用の積み立ては、それと同じ考えによる。

廃棄費用積み立ては事業者に義務化

 資源エネルギー庁は、廃棄費用積み立てをFIT対象のメガ・ソーラー事業者で10KW以上の設備をもつ事業者に義務付けた。PVパネル廃棄の費用は、再エネ発電賦課金の中に含まれているからである。
 廃棄費用積み立て先は、“電力広域運営推進機関”とされた。

廃棄費用積み立ては、PVパネル廃棄の確実な第一歩

 PVパネル廃棄を安全に確実に実施することは、メガ・ソーラーなどの事業者の義務となったわけだが、廃棄費用の確実な積み立ては、その第一歩である。
 今回の措置は、有害物質も含むものもあるPVの廃棄に対して資源エネルギー庁が先手を打ったと言える。
ネットを見ると、廃棄費用の積み立てを事業者が決められたとおりに行うかどうかについて、早くも懸念の声が挙がっている。
 今後の成り行きに注目したい。
 また、皆さんのお住まいの地域にあるメガ・ソーラー設備のこれからと、その廃棄の状況を見届けてほしい。