原子力発電再稼働を進めよう…ダニエル・ヤーギンの呼びかけ


国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長

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原子力発電所再稼働を訴えるダニエル・ヤーギンとIEA

 12月10日の日本経済新聞で、世界的なエネルギー専門家として知られるダニエル・ヤーギンが、原子力発電の「再稼働が、日本経済に助けとなり、エネルギーの安全保障にも役立つだろう」と語っている。
 また、三年半前のことだが、2019年5月、IEAは、カナダ・バンクーバーで開催された“クリーン・エネルギー大臣級会合”にタイミングを合わせ、「クリーン・エネルギーとしての原子力発電:Nuclear Power in Clean Energy System」という報告書を公表した。
 報告書の中で、IEAは原子力発電再稼働が最も現実的で有効なエネルギー対策だという主張をしている。

“命に係わる冬の寒さ”

 今は冬だ。ヨーロッパ諸国、中でも北に位置する国々は、圧倒的に暖房用エネルギーを必要としている。メデイアでは、冬の寒さは、“命にかかわる”とまで言っている。ロシアはこうしたことを承知で、原子力発電施設を含めてウクライナのエネルギー施設を攻撃・破壊している。
 加えて、ヨーロッパ諸国では、電気・ガス料金の高騰が続いていて、一年間で二倍を超える価格上昇の国も出てきた。
 日本でも、世界的な石油、ガス、石炭の価格高騰に、折からの円安も加わって、電力・ガス会社を直撃している。そして、電気・ガス料金の値上げが相次いでいる。政府は、助成金の支払いを始める一方、国民に節電を訴えている。少しオーバーに言えば、現在は第三次エネルギー危機だといっても過言ではなかろう。

重い光熱費負担

 2019年からの新型コロナウイルス感染拡大が世界的傾向だが、日本でもそのパンデミックの影響もあり低所得家計が多くなっている。ちなみに、生活保護を受けている家計は増え続けていて、今では164万世帯・202万人の多きに及ぶ(2022年5月)。
 こうした低所得の家計も、一般家計同様、電気料金の一部として再エネ賦課金を徴取されたうえに料金支払額が増えている。その負担は相当に重いに違いない。
 しかし、それを伝える声をあまり聞かない。冷たい世の中になったものだ。岸田政権は、こうした電気ガスなどの価格高騰に対し、税金を使って支援を始めてはいるが、これも一時しのぎの対策にすぎない。

原子力発電再稼働

 原子力発電再稼働は、稼働費:燃料コストを要するだけで発電できるのだから経済的である。直ぐには電気料金の低減につながりはしないが、電力会社の“いや増す厳しさ”を軽減することは間違いない。
 こうした現状なのだから、未稼働原子力を持つ電力会社には所要工事などの一日も早い完工を期待したい。安全審査をする規制委員会には、迅速な審査を進めてほしい。さらには、発電所が立地する地域社会の皆さんには、大局に目をやり発電所再稼働に力を貸してほしい。

ヤーギンに応えなくてよいか?

 電力供給が家計や産業のインフラサービスであることは言うまでもない。世界に知られるダニエル・ヤーギンが日本の状況に関心を抱き、原子力発電所再稼働を訴えてくれているのだ。再稼働に関わる関係者は、応えなくてはならないのではなかろうか。