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外洋帆船の復活


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 国際海事協会(IMO)は、船舶から排出される温室効果ガスの排出量を2050年までに08年比50%削減する目標を掲げている。化石燃料を利用する船舶から、非化石燃料で走行するものに大転換しなければこれを達成することは不可能だ。これに対応するための舶用エンジンの開発が進められているが、それに使われる非化石燃料として検討されているのは水素とアンモニアで、それを利用するエンジンは、これまでのものとは全く異なったものとならざるを得ない。このエンジン開発にはかなりの時間とコストがかかるだろうし、非化石燃料の供給を安定的に行える基地を港に普及させなければならない。

 だが、最近、温故知新とも言える発想の貨物船が構想されていることを知った。それは、太古の時代から人類が利用してきた帆船を走らせてきた風力を効率よく受けて走る貨物船を実現させようとするものだ。現在でも風の力は帆船やヨットを走らせている。その力を大型の外洋船の推進力に使おうという構想が幾つか実現されようとしている。当然のことだが、それには新素材やコンピュータ制御などが盛り込まれ、エンジン駆動に比べれば速度では多少劣るとはいえ、現行の航路を利用した通商に大きな支障となるものではないようだ。

 この中で最新の構想が、Oceanbird(オーシャンバード)と名付けられた自動車運搬船だ。輸送能力は最大7,000台で平均航行速度は10ノット。北大西洋を横断するのに現在は通常8日かかるのが12日になるようだ。駆動力は金属と樹脂で作った80メートルの高さを持つ巨大な楕円筒形の帆から生まれるが、風の流れを効率よく利用して最大の速度が得られるようにコンピュータで制御されている。この巨大な帆は、風が強いときなど必要な時には20メートルの高さまで縮めることができる。ただ、着岸時など、微妙な操船が必要な時には小型のエンジンで駆動できるようになっている。

 この構想を推進しているのはスエーデンにある3つの組織で、最初に着手した造船事業者のWallenius Marineと、ストックホルムにあるSSPA研究所(軍用船の技術開発)、と王立技術研究所だ。

 このチームは既に長さ7メートルのモデルを試作しており、洋上で走行テストも行っている。ここ数か月かけて試走を行った後、実モデルの設計を2021年末までに完成させ、受注できる体制に入るとしており、2024年末までには最初の納入ができると想定している。これが完成したときには、長さ200メートル、横幅40メートルとなるが、ここで使われる技術は貨物船だけでなく、クルーズ船のような船にも応用できるとしているが、荷物をクレーンで出し入れするコンテナー船は上面がフラットでなくてはならず、帆船にするのは無理なようだ。

 この風力利用設備が、既存の外洋船に後付けで取付ができるとすれば、若干でも燃料消費を削減できるかも知れない。新たな技術開発が必要かも知れないが、今後外洋船の効率化に貢献してほしいものだ。