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先進エネルギー自治体(6)

神奈川県横浜市~自立分散型エネルギーで防災性強化、治水対策も


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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港のスマート化

 東日本大震災の経験から、横浜港は重要な物流拠点として、大地震などの災害が発生した際でも物流機能を継続する必要性が高まりました。市は、港の耐震強化岸壁の整備を進めるとともに、コンテナターミナルや倉庫などの稼働に必要なエネルギーを確保する取り組みを進めています。

 具体的には、横浜港でのエネルギー利用の効率化、災害時における事業継続性の確保を目指し、「港のスマート化」を行う計画です。ふ頭における一括受電の導入や、災害発生時の物流機能を維持させるため、太陽光発電などの再生可能エネルギーや蓄電池の導入等、情報通信技術(ICT)等を活用した、エネルギーマネジメントの導入検討を進めています。 防災対策強化とともに、CO2 削減や省エネを推進するため、ハイブリッド型トランスファークレーン注6)、エコ船舶、LED 照明の導入など、設備の高効率化・省エネ化も進める予定です。

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出典:横浜市

全国に先駆けた総合治水対策

 最後に、横浜市の洪水対策に目を向けてみましょう。鶴見川流域では、1960年頃から急激に市街化が進んだ結果、森林などの緑豊かな自然環境が著しく減少しました。地表がアスファルトに覆われるようになり、降った雨が地中にしみこまずに、一気に川や水路に流れ込んで水害が頻発しました。

 市は、河川管理者や下水道管理者らと連携し、鶴見川流域一体となった総合治水対策注7)に取り組みました。その一つが「鶴見川多目的遊水地」の整備です。2014年10月6日には台風18号が上陸し、流域平均で322mmの大雨が降りました。鶴見川多目的遊水地では、過去最大となる約154万m3 の洪水調節を実施し、一部で氾濫危険水位を超過しましたが、鶴見川本川からは洪水氾濫せず、流域全体でも浸水家屋は数件に留めることができました。

 この時、鶴見川多目的遊水地の水位では、湛水深が最大3.4m、日産スタジアムの下で1.9mに達しました。鶴見川多目的遊水地の下流の亀の子橋地点では、約0.9mの水位の低減効果があったと推定されています。ここでもエネルギーマネジメントシステムが用いられ、太陽光発電等の電力供給により災害時の遊水地機能を守り、水防活動を推進しています。

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2014年10月6日台風18号で洪水調整した鶴見川多目的遊水地  出典:横浜市

 近年、日本でも異常気象が頻発し、各地で台風や大雨による水害が多発しています。また地震による津波被害が心配される地域は非常に多く、防災・減災の取り組みが急務の課題です。住民が安心して暮らせるまちづくりにおいて、平常時のまちの姿が非常時にどうなるかを想定し、リスクをできるだけ減らしていくための設備の設置やインフラ整備等を行う必要性が高まっています。横浜市の取り組みは、そうしたリスク想定における創造力を持ち、最先端技術を有する企業と連携しながら、防災性強化に取り組んでいる好事例と言えます。

注6)
トランスファークレーンとは:大規模なコンテナヤードにおいてコンテナの保管、払出、荷繰り等の作業に使用されるクレーンのこと
注7)
総合治水対策とは:都市化の進展と流域の開発に伴い、治水安全度の低下が著しい都市部の河川について、治水施設の整備を積極的に進め、その流域の持つ保水・遊水機能を適正に確保するなど総合的な治水対策


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