先進エネルギー自治体(4)

大阪府堺市 ZEHの街づくりと下水再生水の活用


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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 4月14日以降、熊本県内各地で強い地震が続き、地震などの自然災害がいつ、どこで起きるかわからないことを痛感しました。甚大な被害が広がっており、住民の皆さんのことがとても心配です。災害に強い“強靱化(レジリエンス)”なまちづくりが重要な課題であることも改めて感じています。先進エネルギー自治体、次の事例は大阪府堺市の取組を取り上げます。

日本初のネット・ゼロ・エネルギー・タウン開発

 2009年“環境モデル都市”に選定された堺市は、2013年(平成25年)、晴美台地区でZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)のエコモデルタウンのまち開きをしたことが注目されました。ZEHとは、住宅の躯体・設備の省エネ性能の向上、再生可能エネルギーの活用等により、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ、または概ねゼロとなる住宅のことを言います。小学校統合で閉鎖された市立小学校の跡地(1万6755m2)を活用し、65区画全ての住宅をZEHにした国内初の「ネット・ゼロ・エネルギー・タウン」を開発したのです。(図1)省エネ・創エネをまちづくりの柱とした、新しいまちづくりの形を示したことが話題になりました。

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(図1)「晴美台エコモデルタウン創出事業」土地利用計画図 出典:堺市

 全戸に太陽光発電システム(4kW以上)、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)注1)、家庭用リチウムイオン蓄電池、EVコンセントが導入されています。(図2)一般的な戸建住宅と比べると、太陽光発電システムとオール電化を採用した戸建住宅の場合、年間光熱費は差し引きゼロとなり、また街区全体でCO2排出量をほぼ100%削減できます。ちなみに経済産業省が2014年に発表した「エネルギー基本計画」では、2020年までにZEHを標準的な住宅にするとしています。

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(図2)ZEHのイメージ図 出典:堺市

 街区では、平常時は、共用部に設置している太陽光発電による電気を集会所にある蓄電池に蓄え、LED街路樹やカーシェアリング用の電気自動車(EV)などに電力供給します。太陽光発電は、全65戸と集会場の屋根などの設置分と合わせて全体で約340kWの発電能力を持ち、余剰電力は売電もできます。停電時は、EVの蓄電池により集会所の電力を数日間賄える見通しです。この他、集会所には非常食を備蓄し、かまどやトイレに使用できるベンチや雨水タンクも整備しました。有事の際でも集会所に必要な電力を供給し、非常食やトイレの問題も考え、地域の防災力を向上させました。また、「街づくりガイドライン」を制定して景観にも配慮し、街区全体を無電柱化しています。(図3)

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(図3)晴美台エコモデルタウン 出典:堺市

 住民が管理組合法人を設立し、集会場や緑地などの共有施設の維持やカーシェアリングの運営などを行い、住民が主体的に参画していることも街づくりのポイントです。堺市は、住民入居後の2013年春以降、ZEHに関する効果検証を毎年実施しており、検証で得られたデータは一般公開しています。

注1)
(HEMS)ホーム・エネルギー・マネジメント・システムとは:家庭のエアコンや給湯機器など各部屋にあるエネルギー機器を、ITネットワークでつないで「見える化」し、自動制御して省エネや節電を図るシステムのこと。