先進エネルギー自治体(2)
岩手県北上市『あじさい型コンパクト・スマートコミュニティ』
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
地震などの自然災害が多い日本において、地域の特性を活かしながら、“強靱化(レジリエンス)”なまちづくりをすることは、大きな課題です。先日開催されたレジリエンスジャパン推進協議会主催『先進エネルギー自治体サミット2016』のファイナリストに残った先進自治体のさまざまな取組事例は、これからのまちづくりの参考になるでしょう。最初は、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県東松島市の「日本初、マイクログリッドによる防災エコタウン」を紹介しましたが、続いても、大震災からの復興を目指す岩手県北上市のレジリエントなまちづくり構想を取り上げたいと思います。
防災に強い“あじさい都市”の形成
北上市は、岩手県内陸部に位置し、平成3年に3市町村が合併し誕生したまちです(人口は約9万4千人)。東日本大震災では、停電により通信インフラが寸断され、災害対策本部では地域の被災状況が把握できず、各避難所に自主的に多くの市民が避難しました。この時の教訓から、市は災害対策本部における“迅速な対応”の課題を痛感したと言います。北上市が目指すのは、防災に強いコンパクトなスマートコミュニティです。市内の地域をあじさいの花に例え、各地域が独自の資源により自立し、地域間が連携する都市モデルをイメージし、「あじさい都市」と名付けました。
北上市あじさい型スマートコミュニティ構想では、太陽光発電や蓄電池などの分散型電源を、災害対策本部となる本庁舎、大震災で自衛隊の前線基地となった北上総合運動公園、第一次収容避難所となる16地区交流センターに導入しています。スマートコミュニティ拠点施設をCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)で結び、エネルギー利用の最適化と防災機能の向上を図る仕組みです(平成24年度経済産業省のスマートコミュニティ導入促進事業)。市内16の地域がエネルギーを通じて支え合うことで、防災機能を高め、持続可能なまちづくりの土台になっています。