固定価格買取制度導入の経緯・失敗の原点(その3)

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3)軽微変更問題
 一旦認定を受けた後、事業者、設備規模などの見直しが、調達価格の変更を伴わない「軽微変更」として簡単に行うことができた。このため、権利の転売や案件分割による「太陽光分譲」、運開後の規模の拡大など、制度が想定していなかった様々な「ビジネスモデル」が登場し、投資案件として拡大した。中には国民負担拡大につながるような悪質な変更(連系コストが電力会社負担となる分割による低圧連系)も多くみられたのである。2014年10月15日に開催された第5回新エネルギー小委員会において、九州経済産業局より、次のような実例が紹介された。

平成24年度に買取価格が決定した10kWの太陽光発電設備について、平成26年2月の運転開始後、同年3月に変更認定手続きが行われ、1,990kWに増設されている。
平成24年度に設備認定を受けたメガソーラーについて、発電事業者が4回変更され、その都度、変更手続きが行われ、現時点でも発電事業がほとんど進捗していない。
平成26年3月に同一事業者が、同一地番において290件の各49.5kW(合計約14MW)の設備認定を受けており、本来払うべき社会的コストが負担されていない。

簡易なフェンスで分割された太陽光分譲ビジネスの例(2015年6月筆者撮影)

簡易なフェンスで分割された太陽光分譲ビジネスの例(2015年6月筆者撮影)

4)情報非開示問題
 設備認定の情報が非開示とされたため、自治体が太陽光計画を事前に知ることができず、条例や法律に違反する状態で建設が行われたケースや、地元や周辺住民に何の情報もないまま、景観や防災に影響を及ぼすような施設が建設されてしまうケースが発生した。前記の新エネルギー小委員会において九州経済産業局より次のような実例が示された。

設備認定を受けた太陽光発電設備の建設に関連して、自治体に事前相談等なく開発されている事例や景観に関する住民とのトラブル等の事例が発生している。管内自治体からは、認定情報を共有してほしいとの要望が出ている。
県が管理する河川に隣接して太陽光発電を設置されているが、造成に当たり、県土木事務所に事前相談なく開発行為を実施。認定状況の情報提供がないため、施工、造成が進んだ段階で、問題が確認され、県の対応が後手に回っている。
農地転用許可が出来ない1種農地、農業振興地域にて、太陽光発電を設置、売電をしている事例が増え、対応に苦慮している。

5.制度改革に向けた動き

 固定価格買取制度導入から2年経った2014年6月に新エネルギー小委員会が再開された。本来は、同年4月に決定されたエネルギー基本計画注23) に基づく、2030年に向けた再生可能エネルギー導入施策を議論するはずであったが、審議の最中に接続保留問題注24)やFIT電源の市場転売によるさや抜き問題注25)など、新たな問題が次々に露見したことから、顕在化した制度欠陥の修正や国民負担拡大抑制の議論に終始することとなった。2015年9月には、基本政策分科会の下に新たに設置された「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会」において、固定価格買取制度の抜本改正が議論され、太陽光抑制と風力や地熱などの長期計画的な導入拡大にむけた制度改革の具体策が示された注26)。しかし、将来の国民負担の拡大がどの程度に収まるのか、今後本格化する電力システム改革とどのように整合させていくのか、長期的な電力安定供給をどのように確保していくのかなど重要な課題については、検討未着手である。
 少なくとも太陽光については、固定価格買取制度の初期導入加速策としての役割はすでに終わっていることは明らかだろう。今後は、中長期的かつ持続可能な形での再エネ導入制度の在り方について、地に足をつけた検討を行うことが求められる。

注23)
http://www.meti.go.jp/press/2014/04/20140411001/20140411001.html
注24)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/004_haifu.html
注25)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/012_haifu.html
注26)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/saisei_kanou/006_haifu.html

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