我が国の全量固定価格買取制度はどう見直されるべきか


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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最終的にはFIT制度からCfD制度に
 FITは国民負担の急激な膨張を予測・制御することができないという欠陥を持つ。導入量の上限を設けるなどの制度改正によって(上限を設けるのであれば、その時点ですでに「全量」固定価格買取制度ではなくなるわけだが)国民負担の膨張に上限を設けることや、上述したFIPに移行して市場価格と連動させるなどの対処が急がれるが、最終的には再エネ導入割合の義務付けであるRPS制度に戻す、もしくは、イギリスが導入して話題となったCfD(Contract for Difference)に移行することも検討されるべきであろう。
 FIPの場合には、再エネ事業者は卸市場の価格変動リスクを受けるが、CfDの場合にはこれに加えて、(1)プレミアムの上限価格を設定し、これを上回った場合は政府に返却すること、(2)再エネ電源の技術成熟度別に入札を実施することで、より安価な再エネ電源から導入されるという点が異なる。つまり、再エネ事業者は、再エネ電力を卸電力市場もしくは相対取引で売却し、定められた価格との差分を第三者から受け取るという制度であるため、卸市場の価格変動リスクは限定できる。また(1)に述べたように、再エネ事業者が儲かりすぎることの無いよう定められた価格よりも高い価格で買い取られた場合には、超過分は返還される。前述(2)では、例えば英国CfDでは、陸上風力と太陽光発電等は同等の普及段階にあるため同じポッドで入札し、これらよりコスト競争力は劣るがポテンシャルのある洋上風力等は別のポッドで入札を実施している。CfDは事業者にとって投資回収の可能性を確保しやすくするものであり、特に原子力のような莫大な投資を長期間かけて回収していく技術を自由化の世界においても維持するためには必要な制度であるとされる。

図4

【まとめ】

 我が国におけるFITの国民負担は既に50兆から80兆という、天文学的数字にまで拡大することが指摘されており、小手先の修正ではどうにもならない。電気という究極の生活必需品の値上がりは、特に低所得世帯や中小企業の負担感が強くなることを鑑み、早急かつ抜本的な改革が望まれる。
 さらに付言するならば、現在の太陽光・風力と言った自然変動電源は安定的な電気を生むことができず、技術開発の余地が大きい。FITは「現在ある技術を普及させるための補助」であり、技術開発への貢献を期待することは難しい。既存技術普及と革新的技術開発のどちらにどう国の資源を投じていくか、真剣な検討が求められている。

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