続・欧州のエネルギー環境政策を巡る風景感

-2030年エネルギー気候変動パッケージ(その1)-


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授

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 昨年9月に「地球温暖化の科学をめぐって」を投稿して以降、半年近くご無沙汰してしまった。久々の投稿である。昨年7月に5回にわたって「欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感」を投稿したが、その後半年の間に色々な動きがあった。これから数回にわたって「続・欧州のエネルギー環境政策を巡る風景感」を綴ってみたい。

2030年パッケージ案

 昨年の投稿では2020年の20:20:20目標(2020年までに温室効果ガスを90年比20%削減、最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーのシェアを20%、エネルギー効率を20%改善)に代わる2030年パッケージを巡る議論について紹介した。おさらいのために再掲すると、昨年1月に欧州委員会が出したパッケージは以下の通りである。

2030年までにGHG排出量を90年比▲40% とする。うち、EU-ETS部門は2005年比▲43%に、非EU-ETS部門は2005年比▲30%とし、後者については各国間で割り振りを行う。
EU-ETSを強固で効果的なものとすべく、次期取引期間が開始する2021年初頭に市場安定化リザーブを導入する。
再生可能エネルギーのシェアを2030年最低27%とする。これはEU全体の目標として拘束力を有するが、各国の国情に合わせたエネルギーシステム改革を可能にするため、EU指令の形で各国別の目標を設定することはしない。
省エネ指令を2014年末までに見直す(欧州委員会の分析では40%削減を達成するためには2030年に25%程度のエネルギー効率改善が必要)。
Competitive, Affordable, Secure なエネルギー供給を確保すべく、複数の指標、例えば貿易相手国とのエネルギー価格差、供給多様化、国産エネルギーへの依存度、加盟国間の接続能力等を設定する。
各国のエネルギー計画がEUレベルでの整合性を確保する共通のアプローチに基づくものとなるよう、新たなガバナンスフレームワークを構築する。
2030年パッケージの検討材料として、欧州委員会はエネルギー価格、コストに影響を与える要因、主要貿易相手国との比較に関する報告書を提出する。

 昨年は、このパッケージ案を巡って温室効果ガス削減の目標レベルをどうするか、単一目標か複数目標か(温室効果ガス削減目標一本でいくのか、20:20:20のように再生可能エネルギー、省エネについても目標を設定するのか)をめぐって加盟国間に色々な議論があることまで紹介した。

加盟国のポジション

 パッケージ案発表後、EU内では10月の理事会に向けて色々な議論が行われた。3つの目標に対する各国のポジションを色分けした興味深い分析もある。
http://energytransition.de/2014/10/who-wants-what-from-the-eu2030-climate-framework/

 図1は温室効果ガス削減目標に関する各国のポジションであり、濃い緑色が「少なくとも40%削減」を支持する国々、淡い緑色が「40%削減」を支持する国々、赤が40%削減目標に反対している国々である。

【図1:温室効果ガス削減目標に対する各国のポジション】

【図1:温室効果ガス削減目標に対する各国のポジション】
(出所:Carbon Brief)