国民運動の具体的な進め方:地方自治体は自らの省エネルギーで先導せよ


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

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3.データベース整備の核になる

 民生部門の対策の推進において、いつもボトルネックとして指摘される重要な点として、データベースの未整備がある。これは省エネ小委でも合同専門家会合でも委員からの指摘があった。これは、民間企業や家庭であれば、経営上の秘密保持や個人のプライバシーの保護などの課題があり、データベースの整備には限界がつきまとう。しかしながら、政府部門であれば、省エネルギーを含めあらゆるデータは原則公開のはずである。これを集積しデータベースとして公開すれば、地方自治体のみならず、民間企業や個人住宅などの民生部門全体の施策を検討するためにも、きわめて重要な行政資源となる。
 これまでも地方自治体の政府部門では様々な温暖化対策が実施され、中には優れた事例もあったと思われるが、そのデータが広く共有されるしくみがなかった。今後は、データベースを作成するという体系的な意図をもって実施していくべきである。

4.民間企業や家庭の先例=ショーケースとなる

 大小の公民館やオフィスなど多様な形態で活動をする地方自治体において、費用対効果に優れ、かつ快適性や業務効率性を犠牲にすることなく省エネを推進できれば、それを先例として民間企業や一般の人々も省エネができるようになる。企業も家庭も政府・地方自治体の建築物にはよく出入りするから、そこでどのような省エネが実施できるか、実例をもって示すことができる。

5.省エネルギー関連産業を育成する

 民生部門の省エネを推進するためには、エネルギー管理(省エネルギーについてのPDCA)のノウハウが欠かせない。どのような高効率な設備を導入するにしろ、まずはエネルギー管理がきちんと出来ていないと、設備を使用する段階で無駄づかいになることも多い。だがこれまでのところ、施設管理業者は、エネルギー管理のノウハウを有していても正当に対価を支払ってもらえないことが多く、このことがエネルギー管理のノウハウの普及への障害となってきた。政府が、エネルギー管理の能力を正当に評価し対価を支払うようになり、さらには、エネルギー管理の能力を有さない施設管理会社は政府・地方自治体からの委託を受注できないようになれば、民間企業の施設管理においてもエネルギー管理能力を有する施設管理会社が活躍するようになり、業界全体としての能力は飛躍的に高まるだろう。さらには、そのような状態になれば、より積極的な省エネへの理解も深まり、具体的な活動につながることが期待できる。
 例えば、光熱費を削減し総合的にコストを削減するという利点がよく理解されて高効率な機器の購入が進んだり、さらには、快適性や安全性などの観点(いわゆるコベネフィット)が正当に評価されて、断熱をいっそう推進しようといった機運が高まるだろう。

 以上のように多くのメリットがある政府・地方自治体による国民運動の推進であるが、これが適切に実施されるための鍵として1点だけ挙げる:

6.地方自治体の政府部門の温暖化対策に対して、PDCAサイクルを確立する

 すなわち、地方自治体の政府部門を、温暖化対策の重要な一部門と位置づけた上で、費用対効果に優れた温暖化対策を実施していくことが重要である。費用対効果が重要なのは、地方自治体の政府部門が温暖化対策を実施する際に、高価なハコモノに流れ、無駄遣いとみられてしまっては国民の理解が得られないし、そのようなことでは、民間部門への波及も期待できないからである。
 例えば市役所のオフィスにLEDを導入する場合、ちらつきなどの問題もなく、雰囲気もよく、さらにはメンテのコストが下がり投資回収が十分にできるということがデータで裏付けられれば、そこにしばしば出入りする人々も自身のオフィスや家庭へのLEDの導入について積極的になることが期待できる。
 そのために、政府として地方自治体の計画・取組に対するフォローアップを行う体制を確立することが必要である。

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