誤解だらけのエネルギー・環境問題
東京電力法的整理論の無邪気さと無責任さと
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
(「WEDGE Infinity」からの転載)
東京電力福島第一原子力発電所事故は未曾有の被害をもたらした。3年以上が経過した2014年5月時点でもなお、福島県全体の避難者が13.1万人、避難指示区域等からの避難者が10.0万人いるとされている注1)。それだけ多くの方の生活を根底から覆したのであるから、その損害賠償額が莫大になることは容易に想像できる。その上に廃炉、除染などのコストも必要だ。こうした事故の後処理に必要となるコストは誰がどのように負担すべきなのか、事故を起こした東京電力がどうやって責任を果たすべきかは、事故直後から多くの議論となった。
東電の法的整理を強く主張する河野議員
河野太郎議員は、自民党が野党であったときから東電の法的整理を強く主張しており(2012年7月27日付ブログ「原子力ムラの大臣達」等)、今年2月のインターネット番組でも、下記のように現在のスキームを批判されている。
2014年2月26日放映 ニコニコ生放送 ここがヘンだよ エネルギー政策 第7回
「東京電力の経営問題 ~新 総合特別事業計画の裏側を読む~」注2)
- ○
- 賠償、廃炉、除染などいずれも東電に当事者能力がないことははっきりしている。汚染水対策もお金が回らないから、いかに手を抜くか(タンクも溶接型でない、水量計がない等)になる。
- ○
- 東電が出来ないものは国が引き受けるしかない。その前提は、経営者、株主、債権者が責任をとること、つまり破綻処理・法的整理である。その上で、東電の事業のすべてをいったん国が引き取り、民間資本で運営できる部分(火力発電、送配電等)は民間に売却する。他方、廃炉等は民間がお金を出してくれるはずはないから、最後まで国が面倒をみることになろう。
- ○
- 国がやらざるをえないし、東電から(お金を)もらうといったって東電は(実態として)破綻しているんだからもらえないわけで、そこは東電(の株主、債権者)にきちっと責任をとってもらう。いくつかやり方があり、一つは東電がカバーできないところは国が税金を投入する、もうひとつはグッド東電、バッド東電に分けた上で、発電会社として再出発をした東電が国に売却した送電網を使うときに託送料金を払う、国がそれを廃炉処理に当てていく。それで全額まかなえるとは思えないが足りなければ税金投入。議論しなければならないのは関東圏(託送料金を高めに設定)と全国の国民の負担配分(税金)が問題。
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- 原子力損害賠償法上、東電は無限責任を負っている。順調に稼働していたときの利益は東電のもの、事故のコストは国に付け回しというわけにはいかない。
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- 今の東電は実質破たん状態であるのに、国が裏から金を入れて、一部上場企業と言うフィクションを作り出している。財務省は真水を入れたがらない、経産省は幹部が金融機関に「東電は破たんさせない」と言ってしまった、といったところからこのおかしなことは始まっている。
- ○
- 上記の結果、東電には将来の展望がなく、社員の流出が起きている。東電を破綻処理して、再処理をする部隊と新たな発電会社にわける、そこで再出発をして良いよ、とすれば、その方が社員としての士気も高まっていく。
- 注1)
- 総合資源エネルギー調査会原子力小委員会第5回会合参考資料3P25より
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denkijigyou/genshiryoku/pdf/005_s03_00.pdf
- 注2)
- 上記番組を視聴し、議員の主張を筆者の責任でまとめたもの。
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