同時同量(前編)

現行制度の考え方と問題点


Policy study group for electric power industry reform

印刷用ページ
2.
30分のタームの中の差分を調整する(アンシラリーサービス注1))。
 積分値として需要と供給が一致していても、更に細かく時間帯を区切っていくと、ゆらぎに相当する需給の乖離が生じているので、これを調整する必要がある。図3に示す通り、積分値を合わせるだけであれば、新電力はXだけの発電出力を確保していれば良いが、ゆらぎの調整までするには、更にYだけの発電出力が必要である。このYに相当する発電出力(kW)を確保しているのは電力会社であり、電力会社はそのkWの固定費相当額を託送料金の一部として、新電力からも回収している。この料金をアンシラリーサービス(A/S:注1))料金と言う。単価は、10銭/kWh程度である。
注1)
アンシラリーサービス(A/S)は、海外では、インバランス供給、電圧制御等、送配電部門が電力供給の品質を維持するために実施するサービス全般を指す広い意味でも使われるが、ここでは周波数制御に絞った狭い意味で用いている。

図3 アンシラリーサービスのイメージ

 以上をまとめたのが表2である。トレンド性のある比較的長いタームの需要変動については、電力会社と新電力が個別に調整を行い(行う調整の内容は異なるが)、より短いタームのランダムな変動は電力会社が一括して調整は行い、費用だけそれぞれ同等に負担しているということである。

(表2)現行の同時同量制度の考え方(電力会社と新電力の役割分担)

電力会社 新電力
トレンド性のある変動 調整の目標 1~数分単位の積分値の需給の一致 30分単位の積分値の需給の一致
調整主体 電力会社 新電力
調整コストの出所 電力会社の発電費 新電力の発電費
インバランス 行っている調整の性格上、30分の積分値では事実上ゼロ 発生したインバランスは電力会社が調整し、新電力はインバランス料金を負担
ランダムな変動 調整の目標 周波数の変動を±0.2Hz以内に抑制
調整主体 電力会社
調整コストの出所 託送料金の一部として、電力・新電力とも同等に負担(電力会社の場合は、A/S料金相当額を託送収支に整理)