テキサス州はなぜ電力不足になったのか


Policy study group for electric power industry reform

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限界費用による価格構成の中で固定費はどう回収されるか

 このような市場の場合、固定費は各電源の短期限界費用と市場価格の差分によって回収される。つまり、図3に示した電源G1の場合は、緑の矢印で示した部分F1が固定費回収の原資となる。対して、G4の場合はF4の狭い範囲だけであるし、G5の場合は、この市場の状態においては、固定費の回収が出来ない。つまり、G4やG5のような短期限界費用の高い電源、つまりピーク電源は固定費の回収が難しくなる。

(図3)

ピーク電源はスーパーピークに期待

 それでは、テキサス州のような市場において、G4やG5、あるいはG6のようなピーク電源は、どのように固定費を回収するのかというと、ピーク需要がさらに増えて図4のD3のような、スーパーピークと呼ばれるような状況になった時である。この場合、利用可能な電源であるG1からG6を使いきっても、供給力が不足している状況であるので、お金を払って一部の産業用需要家等への電力の供給を遮断している。今はやりの言葉を使うと、「ネガワットの購入」である。

(図4)

 ネガワットの購入価格は、電気を受電して生産設備を動かすよりも、生産設備を止めて得る収入の方が利益になる水準であるので、相当に高いものになる。この高いネガワット価格が、市場価格になる、つまり、G1からG6にも同じ価格、即ち自身の短期限界費用よりもはるかに高い価格P3が支払われるので、その価格と短期限界費用の差分で固定費が回収できるとされる。ネガワットに無限に対価を払うわけにはいかないので、上限価格は設定されるが、テキサス州では3米ドル/kWh、先日紹介したオーストラリアでは12豪ドル/kWhであり、普段の電力価格の数十~数百倍の水準である。