日本版再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)について
小野 透
(一社)日本鉄鋼連盟 特別顧問/日鉄テクノロジー株式会社 顧問
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- 適正利潤の考え方
今回の制度設計のモデルとされたドイツでは、2000年にFIT制度がスタートし、その影響で再生可能エネルギーによる発電量は着実に増え、2011年上半期にはエネルギー構成全体に占める再生可能エネルギー比率が20%に達した。特に2004年に太陽光の買取価格を大幅に引き上げて以降は、太陽光発電の伸びが顕著となった。
ところが、「リスクの低い安定した利潤を20年間にわたって得られる」制度は、政府の期待以上の導入を招くこととなり、漸次買取価格の低減を行ったものの、導入拡大に歯止めをかけることができず、近年サーチャージが急拡大(2009年1.8€¢/kWH→2011年4.9€¢/kWH)した結果、国民の負担が過大となり、ついに本年2月に政府は抜本的なFIT制度見直し法案を国会に提出するにいたった。スペインもドイツ同様に、本年1月にFITに基づく新規買取を凍結することとした。
これからFITをスタートさせようとしているわが国が、既に破綻したドイツやスペインの制度(IRR,買取期間)をコピーした上に、施行後3年間は更にIRR1~2%の上乗せをするというのは全く理解に苦しむ。FITが一旦スタートすると、その導入量をコントロールすることがいかに難しいかはドイツ、スペインが示しているし、一旦始まった負担は今後20年間続くわけである。(今年導入されたメガソーラーの負担は2032年まで続く)