日本の地域連系が弱いのは電力会社の陰謀か


Policy study group for electric power industry reform

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隣接会社間の連系は本当に疎なのか

 ところで「隣接会社間の連系は疎」といっても、実際のイメージは少々異なる。図2は各地域の需要規模と地域間連系線の設計上の送電容量を示したものだが、各地域の需要規模に対し、最も小さい北海道においても約1割の送電容量を有している。欧州でも国際連系線の送電容量を各国需要規模の1割程度にすることを目指しているのであり、日本は連系線の容量が少ないというのは実際にはあたらない。ただし、設備故障時における周波数、電圧、安定度などの電気的制約条件により実際に送電できる容量は制限される。また、容量の一部を電力会社が系統異常時の対応用として常時は使わずにマージンとして確保していることに加えて、電力会社による広域的な電源開発にともなう電気がすでにかなりの分量を占めており、新たな電力取引等に使える量はそう多くないのである。

 冒頭にも紹介した通り連系線の送電容量を大きくすると電力会社間の競争につながりやすいため、電力会社に増強へのインセンティブが働かないのではないかという声は、自由化をはじめてから根強く存在している。このため、第3回で紹介した電力系統利用協議会(ESCJ)が連系線の拡大を電力会社に勧告できる仕組みになっている。今まですでに、東日本と西日本をつないでいる周波数変換設備や北海道本州連系設備の増強、中部電力・関西電力間の連系線増強が勧告されている。

(図2)各地域の需要規模と地域間連系線の設計上の送電容量
(出典)地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会 中間報告書

今後の広域運用・取引の拡大に向けて

 連系線の整備には時間とコストがかかる。例えば、現在電力システム制度改革専門委員会の下に「地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会」を設置して、主に周波数変換設備の増強に関する検討・議論を行っているが、それによると周波数変換設備を90万kW増強するのに、10年程度から20年以上の工期と、1,300~3,600億円の工事費を要するということだ。
 したがって当面は、全国大の電力供給・取引、再生可能エネルギーの普及などを推進するため、スマートグリッドなど新たな技術も活用して、まずはマージンを、次に設計上の送電容量いっぱいまで地域間連系線を利用することを考えていくべきだ。さらに多額の費用を要する地域間連系線の増強を行うか否かは、国、ESCJ、電力会社、新電力などその他の事業者、学術者などの関係者で、発電設備投資のスケジュールやロケーションについての計画と調整を図りつつ、費用対効果や費用負担などもよく検討・議論した上で、決定していくべきであろう。
 電力システム制度改革専門委員会では、全国的なネットワークの運用・計画を行う中立的な広域系統運用機関の設立も議論されているようだ。この機関が、こうした役割を担っていくかどうかも注目したい。

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