工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[前編]

震災を経験し、切に感じた日本の強さ


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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組合員からの雇用不安の声

――組合員の方からもこれからの不安や相談が寄せられていると思いますが、どういうお話が一番多いですか。

工藤:昨年8月お盆の前に、被災地へ線香を上げさせていただこうと行ってきました。3県の事務局長、委員長と会い、いろいろ話をしました。中央災害対策本部の体制を組み替える際に、事務局長として協力してほしいと要請も受けました。

 我々の体制は、ボランティア、支援の物資、機能ごとに初め分けていました。それを8月以降は、地域や県ごとに分けて細かいことを吸い上げられるようにしていく体制にしようということになった。しかし、県によって復興のスピードがだいぶ違う。釜石市や仙台市などグランド・デザインを示してほしいという要望が強い地域もある。今、組合として、行政に対するさまざまなアクションが必要なのだと感じています。

 被災地でも、ものは結構来ているので、ものを欲しいということはない。しかし、復興のために工場の中でみんな相当働いています。先が見えないところで一生懸命働いて、瓦礫の処理などで無茶もしてしまう。いろいろな災害が起きていますから、組合の役員にはきちっと安全・衛生対策をチェックしてくれ、非常時でも安全が優先のワーク・ルールをわからせるようにしてくれという要望が強い。その他には、企業をたたむところも出ていますので、やはり多いのは雇用不安の声です。

――雇用不安は震災後、各地で広がっています。雇用不安を払拭することはできますか。

工藤:今の政策の中では円高で企業は海外移転をしようとしますから、国内の空洞化を防止するために円高に対する対策を打ってほしいと言い続けています。また経済連携協定を、TPP(環太平洋経済協定)を含めてきちっとやってほしいことも要請しています。少なくとも、まともに闘える体制を作ってほしい。法人税率の引き下げもありますし、企業が闘いやすいような体制を作ることが大事です。

――被災地の現場で働いている人達の安全管理、精神衛生面、雇用の状況を確認しつつ、また産業全体の空洞化への行政への要望等も行い、組合の活動は多岐にわたりますね。

工藤:被災地では現地の部隊が相当しっかり動いていますから、そこでやっていてくれています。

――本部はいつも情報をキャッチ・アップして、拾い上げているのですか。

工藤:そうですね。現場ではしっかりやってくれていますが、必要なら現場から本部に戻って対応をさらに一緒に考えています。