発送電分離問題の再考②-1

英国事例に見るフェアの追求とその帰結


海外電力調査会調査部 上席研究員

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電力自由化で英国は系統接続をどのように考えたか?

 英国では、1990年に国有電気事業者を分割するとともに、世界でも例を見ない電力自由化に踏み切った。「国有事業者の分割と民営化」「送電部門の資本分離」「卸電力市場(プール制)の導入」「発電の全面自由化」「小売の段階的自由化」を実施した。そして、2001年には卸電力市場の全面改革(相対取引制への移行)、2002年には配電部門の法的分離や料金規制の撤廃に踏み切っている。

 当初の計画(1989年電気法案の策定段階)では、自由化は限定したものとして捉えられていたが、この「限定」が、英国が目指す競争市場構築の障害となり、制度設計に行き詰ったという経緯がある。一方、自由化後も制度の矛盾について、不利な立場の側の事業者から多くの訴えが出されている。英国の電気事業制度は、このようなプロセスのなかで非合理性が可能な限り排除されたため、非常に論理的であり、電気事業制度を論議する上で参考になる点は多い。

 日本では、風力の接続が“くじ引き制”になっているなど、系統接続に対する不満が発送電分離を求める要因の一つになっている。英国における接続は、大規模電源を含め、申し込み順を基本としている。しかし、基幹系統の増強に時間を要しており、地域によっては、接続までに7~8年待たされるケースもある。制度はフェアだが、日本と同様、物理的な系統容量不足には対応できない。この対策として、英国では「コネクト・アンド・マネージ」という方法が導入されている。短く言えば、運転の抑制を前提とした早期接続である。

 ここで問題となるのが、「どの電源を抑制するのか」という点である。接続がフェアであれば、当然、抑制電源の選択もフェアとすべきであり、特定の事業者に運転の抑制やしわとり(需給調整)を義務付けるのは合理的ではない。ここで必然的に、「需給調整市場」という概念が生まれたのである。