塩崎保美・日本化学工業協会技術委員会委員長に聞く[前編]

温暖化問題とエネルギー問題は表裏一体。政府には現実的な解を求めたい


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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温暖化対策とエネルギー計画を現実的な方向に練り上げてもらいたい

――今夏は節電要請がありましたが、化学業界または御社はどのように乗り切られましたか。

塩崎:化学業界では、一部、生産調整を強いられた企業もありました。幸い、ほとんどの会社は多かれ少なかれ自家発電設備を持っています。これらを最大限活用すると共に、新規に自家発を導入したところもありました。さらに、地域や関係会社同士のグルーピングで電力の供給をやりくりしたり、自家発の電力を電力会社に供給するなどの対策も実施しました。従来は、電力会社からの購入と自家発電のどちらが経済的かを勘案しつつ電気を使っていましたが、この夏は経済的なことよりもプラントの稼働を優先させ、自家発電設備をフルに動かしました。燃料が石油系ですのでコスト増が負担になりましたが、供給責任を果たすという意味で実行しました。

――原子力発電所の再稼働の問題が議論されています。来年は今年よりも電力需要がさらに厳しくなるという見方もありますが、どのような見通しを立てていますか。

塩崎:今年の冬あるいは来年の夏に対しては、国で検討されていますが、安全を確認して原子力の再稼働をしていくべきではないかと思います。ライフラインをできるだけ立て直していくことが大事でしょう。政府には、ぜひ、そういう方向で考えてもらいたいと思います。また国民の皆さんには、そういうところを勘案しながら意見を出してほしいと思います。当社では、小さい研究所では自家発電もなく研究体制へのしわ寄せがあったところもありましたが、工場はそれぞれ自家発電設備を持っていますので、積極的に活用して乗り切るつもりです。

――先ほどもお話に出ましたが、自家発電はコスト増になりますね。

塩崎:これも一つの試練です。エネルギー危機という意味では、1972年~73年にオイルショックがありました。消えてしまった産業もありますが、あの危機を省エネ技術で乗り越えて、日本はたくましく生き残ってきたわけです。日本としては省エネ世界一、化学産業も世界で比較できるものについては世界一を維持していますが、日本の技術にさらに磨きをかけていくという意識を持つ必要があるかと思います。個別の電力対策以上に、さらなる省エネも考えていく必要があります。

――そうした個々の努力とは別に、エネルギーの安定供給を考えると、原子力発電の位置づけを今一度議論する必要がありそうですね。

塩崎:長期的な話と中期的な話とに分けて日本のエネルギーをどうしていくのかという議論をしていく必要があると思います。技術的な問題に対応し、原子力の安全確保をすることが必要ですが、一時の感情に流されて、経済への配慮を欠くことはよくないと思います。現実に起こっている産業の空洞化に拍車がかかることを懸念しています。