執筆者:中野 直和

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国際環境経済研究所主席研究員

  • 2015/12/01

    主要排出国のCO2排出実績報告の精度と透明性が地球を救う

     先月30日からパリでCOP21が始まった。何事もなく予定通り開催され成果が上がることを心から祈りたい。今回のCOPは2020年以降の枠組みを決定しようとする、非常に重要なCOPであることは言うまでもない。 続きを読む

  • 2014/01/09

    先進国と途上国に2分することこそ、地球温暖化対策の障壁

     COP19が例年通り一日延長され、11月23日に終わってから約1ヶ月が過ぎた。政府を筆頭に関係団体、関係者からの報告も一巡して、その全貌がほぼ明らかになってきた。カンクン合意にもとづく自主目標の提出手法が明確になったことや、2020年以降についても、ダーバンプラットホーム作業部会において、先進国のみならず途上国との双方の削減行動が、より整理されて記述されたことから、「それなりの成果のあった、まずまずのCOP」であったと言えるのではないか。 続きを読む

  • 2013/10/09

    電力料金値上げの影響は、一か月あたりコーヒー一杯程度なのか?

     9月1日に北海道電力と東北電力の電力料金値上げが実施された。これで、昨年からの一連の電力値上げ申請に基づく料金値上げが全て出そろったことになる。下表にまとめて示すが、認可された値上げ率は各電力会社の原発比率等の差により、家庭等が対象の規制部門で6.23%から9.75%の範囲に、また、工場やオフィスビルを対象とする自由化部門で11.0%から17.26%である。規制部門である家庭野負担居ついては、各社から、標準的世帯当たりの料金として、一か月当たり224~457円の増加、との試算結果が示されている。 続きを読む

  • 2013/04/24

    日本発のISO規格“鉄鋼CO2排出量・原単位計算方法”発行される
    (2)欧州排出権取引(EU-ETS)の影と温暖化対策への貢献

     ISOにおける新しい規格の検討は、分野別に設置されたTC(専門委員会)とその傘下のSC(分科委員会)で行われる。それぞれ幹事国が決まっているが、700強ある幹事国の内、約5割を欧州、2割を北米が占め、アジア・オセアニアすべてを合わせても3割程度であり、漸減傾向にはあるが、まだまだ欧州がISO活動の中心である。また、環境マネジメントに関してはTC 207(環境管理)が設置されており、その分科委員会であるSC7(GHGマネジメント及び関連活動)から、2006年に欧州の考え方を色濃く反映した、組織におけるGHG排出量の定量・報告・検証を規定するISO 14064が発行されている。 続きを読む

  • 2013/04/23

    日本発のISO規格“鉄鋼CO2排出量・原単位計算方法”発行される
    (1)ISO初の生産プロセスCO2排出強度算定手法

     日本鉄鋼連盟が2009年に国際標準化機構(ISO)へ規格化を提案した「鉄鋼CO2排出量・原単位計算方法」が、本年3月15日に、「ISO 14404」として発行された。筆者は、規格化のためにISOに設置されたワーキンググループの一員として、規格化にかかわってきた。生産プロセスのCO2効率指標の具体的計算方法を記述したISO規格の策定は、鉄鋼はもとより全産業においてもISOで初めてであり、また、地球温暖化関連のISO規格としては、日本発は極めて稀である。 続きを読む

  • 2013/04/19

    EU-ETSで重大な否決

    BBC(2013/4/17)から抜粋

     4月16日、欧州議会は、悩めるEU排出権取引を救う提案を否決した。
     これは、“Backloading”と呼ばれる提案で、排出権のだぶつきによる価格低下を是正するため、市場から9億㌧の排出権を2年間引き上げる、というもの。エネルギー関連企業は強く支持をし、一方、産業側は、排出権価格の低迷はここ数年の経済停滞を反映したもので、EU-ETSが機能しているということだ、として強く反対していた。 続きを読む

  • 2013/02/06

    COP18 関西経済連合会COP初参加

     COP18が終わって2ヶ月近くが過ぎようとしているが、関西経済連合会(関経連)は今回NGOとして認定を取得し、COP18(ドーハ)に初参加したので、以下に紹介する。経済団体としては経団連が継続して参加しているが、それ以外では関経連がそれに次ぐ参加となる。初回でもあり関経連としては3名の参加で、私もその一員として参加した。 続きを読む

  • 2011/08/17

    日本の石炭火力発電技術が温暖化を抑制する

     国際エネルギー機関(IEA)は、毎年、主要国の電源別発電電力量を発表している。この2008年実績から、いくつかの主要国を抜粋してまとめたのが下の図だ。現在、日本人の多くが「できれば避けたいと思っている」であろう順に、下から、原子力、石炭、石油、天然ガス、水力、その他(風力、太陽光発電等)とした。また、“先進国”と“途上国”に分けたうえで、それぞれ原子力発電と石炭火力発電を加算し、依存度の高い順に左から並べた。

    2008年度主要国の電源別発電電力量

    2008年度主要国の電源別発電電力量

    世界の発電電力量の4割を石炭火力が賄っている(出典:IEA/ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES(2010Edition),ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES(2010Edition)から筆者が作成)

     この結果を見ると、どの国も原子力と化石燃料を加えると80%を超える。また、化石燃料のうち、石油は少なく、石炭と天然ガスが大部分を占める。国によって両者の比率は大きく異なり、天然ガス資源が比較的手軽に入手できる国では当然ながらガスの比率は高い。しかし注目すべきは、石炭の占める割合が、主要途上国だけでなく米国やドイツでも40%を超えており、世界全体で4割を占める最大の電力源だということである。なお、「その他」に分類されている太陽光や地熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、各国とも強化すべき電力源と位置づけてはいるが、基盤電源とするためには、技術開発の加速による飛躍的な効率向上等によって大幅なコストダウンを実現することが必須であろう。

  • 2011/04/11

    地球規模のCO2削減に向けて実効あるMRV(測定・報告・検証)を

     2010年に開かれた第16回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)では、前年のCOP15で成立したコペンハーゲン合意が前向きな形で息を吹き返したと言われている。そのコペンハーゲン合意に基づいて、各国は2010年初めに、二酸化炭素(CO2)の排出抑制目標を国連に提出した。こうした数値目標などから、主要5カ国について、2020年の1人当たりCO2排出量を試算した(下の図)。

     まず、米国は国連に提出した2020年の目標通り17%削減したとしても、1人当たり排出量は依然として高い。一方、2009年に米国を抜いて世界一のCO2排出国となったとされる中国は、2005年時点では、1人当たり排出量は先進各国よりも明らかに少なかった。しかし、2020年になると様相は一変する。中国の目標はGDP(国内総生産)比であり、経済発展により排出量は増える。今回の試算の結果では、1人当たり排出量は2005年の1.7倍となり、米国の約半分、日本やEU(欧州連合)をわずかではあるが超えるレベルになる可能性が高いことがわかった。経済成長のスピード次第でCO2排出目標が変化するが、途上国に分類することはさすがに難しい。

     中国の健全な経済発展が歓迎すべきものであることは言うまでもない。しかし、その過程で、日本をはじめとする先進各国が開発し、実用化してきた省エネ技術が最大限に取り込まれなくてはならない。もちろん、中国の独自技術も開発されるであろう。その状況が広く公表され、先進国はもとより、後に続く途上国に共有されることが極めて重要である。コペンハーゲン合意で示された、達成状況を国際的に相互検証するMRV(測定/報告/検証)が COP16では正式に決定された。世界共通に評価できる手法で、包括的な実績と技術に関する詳細な報告が行われることが、地球規模のCO2削減取り組みに不可欠である。

    2020年には、1人当たりCO2排出量でも中国が日欧を上回る。なお、今回の試算には以下のデータを用いた。
    ・米国、日本、EU27の2005年のCO2排出量は、IEA CO2 EMISSTIONS FROM FUEL COMBUSTION(2010 Edition)
    ・米国、日本、EU27の2020年のCO2排出量は、排出実績に各国目標の削減率を乗じて算出。
    ・中国、インドのCO2は排出量は、RITE「世界各国の中期目標の分析」(平成21年12月8日)
    ・人口は、国連「World Population Prospects: The 2008 Revision」

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  • 2010/12/22

    日本がリードするプラントの効率算定方法標準化

     製鉄所をはじめとしたプラントの効率を測ることは、そのこと自体は単純なものである。システムバウンダリー(システム境界)を決めて、その境界を出入りするエネルギーや物質の量を計上し、それぞれの物質に見合った換算係数をかける。そこで得られた数値を足せば総量であり、総量を生産量などで割れば原単位となる。

     しかし、システムバウンダリーの決め方や換算方法が異なれば、まったく同じプラントを対象にしても、無数の「効率値」が得られることになってしまう。そして実際には、各国ごとだけでなく、同じ国のなかでも、プラントの効率を測るための複数の算定方法が存在している。

     鉄鋼業の場合、より広い範囲でお互いの効率を比較することによって自らの位置付けを知ることが効率改善に有効である。そこで、日本の鉄鋼業界がリードして、共通の効率算定方法の構築を進めてきた。クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)での成功を基に世界鉄鋼協会(ワールドスチールアソシエーション)でも算定方法を確立し、データ収集を行ってきた。そして日本が提案者となって、世界鉄鋼協会の効率算定方法をISO規格化する作業がスタートしている。

     APPや世界鉄鋼協会のときもそうであったが、ISO規格化にあたっては各国・地域の事情がより色濃く出てくるため、なかなかタフな仕事となる。特にEU ETS(欧州連合域内排出量取引制度)を抱えている欧州とは、今後もハードな交渉が続くことは避けがたい状況である。しかし、生産技術・製品特性とともに、技術に裏付けされた日本の効率算定方法は、世界に貢献できることは間違いない。もちろん、国際化のなかでカラー道着が採用された柔道のように、日本の効率算定方法もある程度の修正が必要になるかもしれないが。

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