MENUMENU

執筆者:電力改革研究会

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Policy study group for electric power industry reform

  • 2012/05/10

    日本における発送電分離は機能しているか

    発送電分離とは

     電力自由化は、送電・配電のネットワークを共通インフラとして第三者に開放し、発電・小売部門への新規参入を促す、という形態が一般的な進め方だ。電気の発電・小売事業を行うには、送配電ネットワークの利用が不可欠であるので、規制者は、送配電ネットワークを保有する事業者に「全ての事業者に同条件で送配電ネットワーク利用を可能とすること」を義務付けるとともに、これが貫徹するよう規制を運用することとなる。 続きを読む

  • 2012/05/05

    小口小売(家庭部門)自由化に伴う副作用
    ―その対策はあるのか?

     前回説明したとおり、かつて電気事業は、発電から送電・配電・小売に至るサプライチェーン全体にわたって「自然独占性」があるとされ、地域独占が認められてきた。しかし、1990年頃から、発電・小売部門に競争を導入するための規制改革(いわゆる電力自由化)の動きが各国で見られるようになった。このような動きの根拠は、発電技術の進展により、発電事業に自然独占性が当てはまらなくなったからだとされている。 続きを読む

  • 2012/04/27

    電気事業は設備を作れば作るほど儲かるのか

     昨年12月27日、枝野経済産業大臣が「電力システム改革タスクフォース論点整理」を公表した 。ここで提示された論点を踏まえて、政府の総合資源エネルギー調査会総合部会の下に「電力供給システム改革専門委員会」が設置され、数回の議論が既に行われている。議論が行われる背景は、「東日本大震災によって現在の電力供給システムの問題点が顕在化したため」とされている。
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  • 2011/12/16

    情報に惑わされないための食の安全に関する入門書
    「安全な食べもの」ってなんだろう?放射線と食品のリスクを考える

     福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の流出により、食品の放射能汚染がにわかにクローズアップされている。事故から10日あまりたった3月23日に、東京都葛飾区にある金町浄水場で1kgあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたことが公になるや、首都圏のスーパーマーケットに置いてあったミネラルウォーターがあっという間に売り切れる事態に発展した。最近では、福島県二本松市の水田で栽培したコメから、1kgあたり500ベクレルを超える放射性セシウムが検出され、メディアに大きく取り上げられている。しかし、1kgあたり210ベクレルの放射性ヨウ素や500ベクレルの放射性セシウムはどの程度の危険性を持っているのか、実はほとんどの方は判断がつかないのではないだろうか。本書は、我々が毎日必ず接している「食べもの」の安全性について、「リスク」という概念を用いて、一般の生活者にもわかりやすく解説したものである。

     著者の畝山(うねやま)さんは、国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部第三室長で、食の安全に関するエキスパートである。放射性物質に限らず、食品に含まれるさまざまな化学物質が人体に与える影響について情報を収集し、発信してきた。本書の冒頭では、「私たちが毎日食べているものは、もともと安全性が確認されたり保障されたりしているものではなく、未知の、膨大なリスクのかたまりである」という衝撃的な事実が述べられている。しかし同時に、だからといって怖がってばかりいるのではなく、適切に注意し、楽しんで食べるために、正確な知識を身につけることが重要だと指摘している。

     関心を集めている放射性物質のリスク(この場合は発がんリスク)については、食品にしばしば含まれている化学物質のリスクと比較することで、それぞれの大小関係を明らかにしている。たとえば、わが国で作られるコメには無機ヒ素が含まれており、毎日食べ続けると20ミリシーベルトの被ばくと同じレベルになる(仮に1kgあたり500ベクレルのコメを毎日食べ続けても、せいぜい1ミリシーベルトである)。この例以外にも、本書では、加熱調理に伴って生成する発がん性物質のベンゾ(a)ピレンや、カビ毒の一種であるアフラトキシンのリスクが、現在注目を集めている食品中の放射性物質に比べてかなり高いことがわかる。

     一方、日本人が日常的に被るさまざまなリスクのなかで発がんリスクが最も高いのは喫煙であり、飲酒によるリスクも喫煙の4分の1に達する。本来、こうした身の回りに潜むリスクとの比較抜きに、放射性物質のリスクは語れない。このことについて著者は「食品添加物や残留農薬でがんになるとか、ほんのわずかの被ばくでもがんになるとか脅かしながら、タバコや飲酒についてまったく触れない人がいるとしたら、その人の目的はあなたやあなたの家族のがんリスクを減らすことではない」と指摘する。この一文は、放射性物質の危険性だけをことさらに煽る一部の報道や(自称)専門家たちへの痛烈なメッセージであろう。

     今だからこそ、正しい知識を身につけて、冷静に、そして現実的に判断することが重要である。すべての国民に読んでほしい書である。

    『「安全な食べもの」ってなんだろう? 放射線と食品のリスクを考える』  
    畝山智香子(日本評論社)
    ISBN978-4-535-58604-8 1600円+税

    記事全文(PDF)

  • 2011/12/14

    技術、安全保障、経済の3人の専門家が語る今後のエネルギー戦略
    ~それでも日本は原発を止められない~

     福島第一原子力発電所の事故後、わが国では原子力政策を含むエネルギー政策について、さまざまな評論・解説が繰り広げられてきた。分野の異なる3人の専門家が、その内容を検証して警鐘を鳴らすとともに、わが国が選択すべきエネルギー戦略を明示したのが本書である。

     著者の一人である山名氏は京都大学原子炉研究所教授で核燃料再処理技術が専門。森本氏は拓殖大学海外事情研究所所長で国家安全保障について多くの著書を執筆している。また、中野氏は京都大学工学研究科准教授で経済ナショナリズムについて教鞭をふるう。この3氏が、対談形式で知見や考えをいかんなく披露している。3氏に共通するのは、原子力技術やエネルギー戦略に対する極めて冷静かつ現実的な姿勢である。

     山名氏は原子力技術者の立場から、今回の事故では、約40年前の旧式の技術を使い続けてきたことや、津波に対する分析が甘かったことなど、技術や許認可の面で多くの反省点があることを率直に認めている。しかし、だからといって「失敗したらすべてやめる」という議論は、技術開発の本質を無視した危険なイデオロギーであると主張する。中野氏は、この構図が、第二次世界大戦の敗戦により、悲惨な戦争は二度と起こさないと武装放棄し、自衛隊の軍隊化に反対する状況と酷似していると指摘する。両氏は、「空気」に支配されることなく、冷静に判断することが必要であると訴える。

     一方の中野氏は、反原発の背後には反国家があると指摘する。原発を持つ最大の理由は国家安全保障であり、「国家」を嫌う左翼的な人には受け入れられないものであるとの見立てだ。彼らの推奨する再生可能エネルギーはすべからく分散型エネルギーであり、その根底には国家の否定があると指摘する。エネルギーが国家安全保障の要であるとの認識は極めて重要であるにもかかわらず、いまだ国民に浸透しているとは言い難い。この点について、3氏は、本書の随所で警鐘を鳴らしている。

     国家安全保障の基本要素は、国防、エネルギー、食糧である。なかでも、エネルギーの果たす役割は非常に大きく、森本氏は国防の根幹も結局はエネルギーであると述べている。そのうえで森本氏は、「エネルギー安全保障」といえば、諸外国では、自国でなるべくエネルギーを賄うことを前提とするのに対して、日本の場合は、輸入を前提にしている点が大きく異なると指摘する。再生可能エネルギーこそがエネルギー安全保障に貢献すると主張する向きもあるが、3氏は、現在の再生可能エネルギーの実力では原子力の代替にはならないと喝破する。

     福島第一原発事故を受けて、国民の多くは脱原発、再生可能エネルギー導入の流れを是としている。しかし、それは国家安全保障の根幹を揺るがす可能性が極めて高い。諸外国に比べてわが国では、エネルギー確保の重要性があまり認識されていない。中野氏は、この状況を平和ボケになぞらえて「エネルギーボケ」と呼ぶ。エネルギーなくして国家はありえない。

     本書では、ほかにも、核廃棄物処理の安全性や、民主党政治の問題点など、さまざまな観点から深く掘り下げた論考が加えられている。福島第一原発事故やわが国がとるべきエネルギー戦略について、より広い視野で、より深く考察したい方には必読の書である。

    『それでも日本は原発を止められない』 
    著者:山名元 森本敏 中野剛志(産経新聞出版)
    ISBN978-4-8191-1145-4 1400円+税

    記事全文(PDF)