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異業種と掛け算で新産業創出

書評:日高洋祐、牧村和彦、井上岳一、井上佳三 著『Beyond MaaS 日本から始まる新モビリティ革命 ―移動と都市の未来― 』


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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電気新聞からの転載:2020年11月13日付)

 本書は2018年11月に公表された「MaaS―モビリティ革命の先にある全企業のゲームチェンジ」(日経BP社)に続く第2弾として上梓されたものだ。Beyond MaaSというタイトル通り、MaaSを超える革新的未来に向けたヒントが書かれている。

 MaaSは今、縦と横2方向に発展を遂げようとしている。縦とは、MaaSの価値を深堀りし、地域の交通体系の再構築や適切なモビリティサービスの提供につなげることだ。ディープ・テックならぬディープMaaSという言葉に、単にマルチモーダルなMaaSアプリの提供にとどまらない、破壊的ソリューションに寄与することへの思いが込められている。横とは、モビリティ産業と異業種との掛け算の創出だ。これこそ本書の真価でもあり、エネルギー分野の皆さまに本書をご紹介したいと思った理由でもある。

 従来型社会から、大きく方向性を変えようとしている今、各セクターにおいて新たな未来が模索されているが、セクターの中で議論していても解を見つけ出すことは難しい。セクターの掛け算が必要であることは、本欄も含めて何度も申し上げてきたし、次世代モビリティに関する政府委員会の末席に、筆者のようなエネルギー分野の人間を加えていただいていることは、政府としても領域の掛け算によるソリューションを求めていることの表れだろう。セクターの掛け算にご関心があればぜひ、本書の第7章から目を通してみていただきたい。「全産業を巻き込むBeyond MaaSのビジネスモデル」で描かれている、セクターの掛け算のアイデアは、一つのセクターの中で課題と向き合うことによる閉塞感や手詰まり感から解き放ってくれる。

 もちろん、セクター同士の掛け算を創出することは容易ではない。しかし、これからの社会変革の肝として意識されていることも間違いない。エネルギーもモビリティも共に「手段」だが、掛け算をすることで、生活者に新たな価値を提供するビジネスモデルを描くことも可能になるかもしれない。

※ 一般社団法人日本電気協会に無断で転載することを禁ず

『Beyond MaaS 日本から始まる新モビリティ革命 ―移動と都市の未来―』
日高洋祐、牧村和彦、井上岳一、井上佳三 著(出版社:日経BP)
ISBN-13:978-4296105281



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