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猛暑は地球温暖化のせいなのか?


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹


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 猛暑になるたびに「地球温暖化の影響だ」とよくメディアで言われるが、本当だろうか。地球温暖化は起きたといってもごく緩やかなペースであり、30年間で0.2℃程度に過ぎない。40℃を超えるような猛暑の原因は主に自然変動であって、地球温暖化はごく僅かにその温度を上げているに過ぎない。

1.気象庁の「気候変動監視レポート 2018」

 地球温暖化で猛暑が増えた、とよくメディアで言われる。最近、特に引き合いに出されるのが、「2018年夏の記録的高温」である。これに関し、気象庁は以下のレポートを出している:

気象庁「気候変動監視レポート 2018」(以下、「レポート」)
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/2018/pdf/ccmr2018_all.pdf

 このレポートは「異常気象分析検討会」の下記の気象庁報道発表(以下、「報道発表」)を下敷きにしている:

気象庁報道発表 「平成30年7月豪雨」及び7月中旬以降の記録的な高温の特徴と要因について
https://www.jma.go.jp/jma/press/1808/10c/h30goukouon20180810.pdf

 以下本稿では「レポート」と「報道発表」の内容を検証する。

2.レポートの「はじめに」は、いかにも「地球温暖化が原因で異常高温が起きた」かの様に読めるが…

 レポートでは、「はじめに」で、以下のように述べている。
 「平成30年(2018年)は、...東・西日本を中心に顕著な高温となり、東日本では7月及び夏(6~8月)の平均気温が統計開始以降で最も高くなりました。 このような極端な気象・気候現象の長期的な増加傾向には、地球温暖化の影響があると考えられ、気象庁で昨年 8月に開催した「異常気象分析検討会」においても、昨年夏の顕著な高温及び豪雨の背景に地球温暖化の影響があったという見解を公表しました。」

 この「はじめに」の問題点、および豪雨についての検証は前回書いたので、参照されたい。
 本稿では2018年夏の高温の「背景に地球温暖化の影響があったという見解」について掘り下げてみよう。

3.「レポート」と「報道発表」の記述

 まずは記述を確認する。
 「2018年夏は東・西日本を中心に気温がかなり高くなった。東日本の7月及び夏(6~8月)の平均気温はそれぞれ平年差+2.8℃、+1.7℃となり、それぞれ7月及び夏として 1946年の統計開始以降で第1位の高温となった(図1)。」(レポート P4)
 「猛暑日や真夏日となる地点も多く、特に7月23日は埼玉県熊谷市で国内の統計開始以来最高となる41.1度など、各地で40度を超える気温が観測された」(報道発表 P10)。
 また、このような高温がもたらされた要因としては、図2のように整理されている。


図1 平均気温平年差(2018年6月~8月)(レポート P4)


図2 2018年7月の高温をもたらした要因(報道発表 P12)

3.「レポート」と「報道発表」を検証する

 図2にあるように、2018年夏の高温には、複数の要因があり、地球温暖化はその要因の1つとして挙げられている。しかし、これ以上の詳しい説明は「レポート」にも「報道発表」にも無い。
 では地球温暖化はどの程度寄与したのだろうか? 
 地球温暖化は、起きているといっても、ごく緩やかなペースである。日本においては、気象庁発表で100年あたり1.1~1.2℃程度である。なお東北大学近藤純正名誉教授によれば、気象庁発表には都市化等の影響が混入していて、それを補正すると100年あたり0.7℃程度であるとされる(図3)。100年あたり0.7℃とすると、子供が大人になる30年間程度の期間であれば0.2℃程度となる。0.2℃と言えば体感できるような温度差ではない。


図3 1881年~2017年の日本平均のバックグラウンド気温(都市化等の影響を除き補正したもの)の経年変化、1881年~2017年(137年間)注1)

 「報道発表」には「熊谷で最高気温が41.1℃になった」とある。ではこれへの地球温暖化の寄与はいかほどか? もし過去30年間に地球温暖化が無ければ40.9℃であった、ということだ。40℃を超えるような猛暑の原因は主に自然変動であって、地球温暖化はごく僅かにその温度を上げているに過ぎない。
 平均気温についても同じようなことが言える。「レポート」では東日本の7月の平均気温が平年より2.8℃高かった、としている。これも、もし過去30年間に地球温暖化が無ければ2.6℃高かった、ということだ。猛暑であることに変わりはない。 
 図3を見ると、年々の温度変動の幅もかなり大きいことが分かる。これら日本規模の広域的な温度変動に加えて、地域的にも変動があり、更には局所的にも、30年も経てば、温度を上げる要因は沢山ある。都市化することで、アスファルトやコンクリートが増えると、1℃ぐらいは暑くなる。家などが建て込むことで風が遮られても1℃ぐらいは上がる。水田が無くなるとその周辺では1℃ぐらいは暑くなる注2) 。地球温暖化で0.2℃上昇するという影響は、このような局所的な温度変化によってもかき消されてしまう。熊谷をはじめ、人々が「猛暑」を感じているとしたら、その殆どは、以上のような地球温暖化以外の要因による暑さだ。 
 現時点で「猛暑の原因が地球温暖化である」という言説には無理がある。地球温暖化は猛暑の原因の「ごく一部」に過ぎない。少なくとも「レポート」と「報道発表」からはそうとしか読み取れない。 

注1)
平易な解説は
http://ieei.or.jp/2019/09/sugiyama190930/
専門的な解説は
K173. 日本の地球温暖化量、再評価2018近藤純正ホームページ
http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ke173.html
注2)
http://ieei.or.jp/2019/12/opinion191202/


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