停電情報の不備で損害賠償請求に


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」からの転載:2019年12月11日付)

 2019年は停電が多く発生した年だった。日本では台風により千葉県を中心に停電が発生し、米国では山火事を防ぐためカリフォルニア州の3電力会社が送電を停止し、中でもパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社(PG&E)の停電は大規模になった。

 加州では17年、18年と乾季にPG&E保有の送電線と設備由来の山火事が発生した。18年の山火事では86人が死亡し大規模な損害が生じたため、PG&Eは米国のチャプター・イレブンと呼ばれる更生法申請に追い込まれ19年年初、更生会社となった。

 異常乾燥となった今年10月、PG&Eは山火事防止を目的に送電を2回にわたり停止した。9日から12日の停止時には73万8000契約、200万人以上が影響を受けたが、停電期間中、PG&Eの停電情報を知らせるウェブサイトが何度も故障し、閲覧できなくなった。コールセンターの電話は数時問待ちで、行政も停電情報を把握できない事態が生じた。

 10月14日、加州のニューサム知事はPG&EのジョンソンCEOに書簡を送り、停電情報提供に問題があったこと、さらには送電停止前の行政機関からの支援申し出を、自社で対処可能であるため不要と断ったことを指摘し、停電時の対応に不備があったため、結局、行政が緊急対策を発動することになったと同社を強く批判した。

 知事は、PG&Eは停電対象の個人顧客に100ドル、事業者に250ドルの補填を行うペきと要求。PG&Eは、利害関係者からの意見を聴取したいと応えたのみで、補填についての回答を避けた。11月12日、調査を開始した州公共事業委員会は、事前の計画が十分に練られておらず、社内外でコミュニケーションに問題があったと指摘。停電の情報提供の失敗、行政との連携ミスが罰金の対象にならないとPG&Eが考えるならば、その根拠を示すように求めた。

 PG&Eの事例から学ぶことは、関係者への正確かつタイムリーな情報提供と行政など関係機関との密接な連携だ。うまくいかなければ、大きな損失をかかえる可能性がある。