中世は今ぐらい熱かった:IPCCの最新の知見


キヤノングローバル戦略研究所/IPCC1.5度特別報告書代表執筆者


印刷用ページ

4 地域的な気候変動はもっと大きかったか?

 北半球ないしは地球規模で見て温度変動が大きかったということは、局所的な温度変動はもっと大きかったと考えるのが普通であろう。グリーンランドについては研究が進んでおり、4万年前から2万年前にあたる最終氷期には今よりも25度程度も低く(図6A)、8000年前から4000年前にかけては今よりも3度近く高く(図6B)、紀元800年から1000年にかけての中世の温暖期には1度程度高く、1600年ごろの小氷期には1度程度低かった(図6C)とされている。(なおこの図は移動平均をとっているので細かい変動は再現されていないことに注意)。

図6 グリーンランドにおける温度の変遷 https://pdfs.semanticscholar.org/6af6/898d8d65d06c65ca94f52f93ec88b190f652.pdf

図6 グリーンランドにおける温度の変遷
https://pdfs.semanticscholar.org/6af6/898d8d65d06c65ca94f52f93ec88b190f652.pdf

5 将来に向けての意味

 もしも中世に現在程度の温暖化が起きていたとしたら、これは何を意味するのか。
 温室効果ガス(GHG)が原因でなく、それ以外の要因(以下、自然変動と呼ぶ)によっても、今程度の温暖化は起きうる、ということだ。

 このことは、第1に、将来の温暖化の推計値に影響を及ぼす。
 IPCCの第5次評価報告では、CO2濃度倍増時の温度上昇として定義される「気候感度」は「1.5度と4.5度の間にある可能性が高い」としている。かなり不確実性の幅がある。
 つまり、近年に温暖化が起きているのは確かであるが、どの程度が自然変動であり、どの程度がGHGによるかは分かっていない。もしも自然変動の寄与が大きければ、GHGの寄与は小さいことになる。つまり気候感度が小さくなり、将来のGHGによる温度上昇推計値も低くなる。だから自然変動の大きさの推計は重要になる。

 第2に、人間も生態系も、そのような高温に適応して生きた経験がある、ということである。
 もしも過去に適応できたのであれば、技術がより進歩した現在においては、より容易に適応できることになる。
 また、過去においてどのように適応したのかを学ぶことも出来る。生態系についていえば、現在の温暖化で起きていることは、過去の暖かい時期に戻るだけのことだ、と考えることが出来る。
 更に言えば、人間や生態系にとって大事なのは、北半球や地球規模ではなく、局所的な変化である。これについて、詳しい気候の復元研究が望まれる。日本でも気候の復元研究が進んでいる
(例えば、中川毅 http://www.ritsumei.ac.jp/research/center/paleoclimate/、中塚武 https://www.teikokushoin.co.jp/journals/history_world/pdf/201501g/05_hswhbl_2015_01g_p06_07.pdf
 この結果については、また改めて検討したい。



温暖化の政策科学の記事一覧